飛鳥シャードで開催されるLudoゲーム世界大会準決勝(日本代表決定戦)についてお知らせいたします。

準決勝ルールについては下記をご確認願います。

Ludoゲーム世界大会準決勝(日本代表決定戦)ルール(2026年度版)

2026年秋にテストセンターで開催されるLudoゲーム世界大会へ出場するために日本シャードが開催する準決勝のルールについて説明します。

準決勝(日本代表決定戦)について
・準決勝では8つの全日本シャードからサイコロでAブロック(4チーム)とBブロック(4チーム)に分かれて競います。
・組み合わせは当日各チームの代表者が振るサイコロで出た目の高い順でブロックと色を選んでいただきます。
・各ブロックの優勝チームが世界大会決勝に進出します。
・メンバー変更がある場合は事前に担当EMまでご連絡願います。

参加チームについて
・4人1チームとし、参加受付時には4人全員が揃っていること。
・予選ではチームメンバーの途中変更は認めていませんでしたが準決勝についてはメンバーの都合による変更は認めます。
・メンバー全員がチームローブを着れること。
・1プレイヤーで複数のチームに参加又は複数のシャードでの参加は禁止です。
・時間短縮のため試合当日には細かいルール説明は行いませんので事前にルールを確認してください。
・以上について条件に合わなかった場合はそのチームは失格となります。

参加受付について
・準決勝試合当日の指定時間までに4人揃って受付してください。
・チームリーダーを1名選出してください。
・準決勝以降はチーム名はシャード名になります。

Ludoゲームのルールについて

基本的にEM Takakoが定めたルールを踏襲します。

用意する物
・チームローブについては担当EMが用意します。(持ち込み可)
・騎乗生物やペットの同伴については禁止します。

ゲームスタート
・まず4人はチームカラーのJail(牢獄)に入ります。
・各チームリーダーがサイコロを振り、一番大きい数字を出したチームから時計回りにスタートします。
・スタート後のサイコロについてはチーム内で自由とします。
・パスは認めません。

脱獄について
・サイコロのいずれか一方の目が6であれば、1人脱獄できます。
・サイコロの目の合計が6の場合は脱獄できません。
・6のゾロ目が出た場合でも1人しか脱獄できませんが、脱獄後にゾロ目の恩恵(再振り)は受けられます。

道中について
・時計回りにコースを進行します。
・サイコロの中に6が出た場合は脱獄するか進行するかどちらかを選択します。
・他のチームメンバーがいるマスに停止した場合はPKが成立し先にいたキャラクターをJailに戻します。

中央部について
・自分のチームカラー内しか入ることはできません。
・必ず毎回ゴールマスに向かって進み、オーバーした分は折り返します。

勝敗について
・準決勝についてはチームメイト2名が先にゴールした順番で決定します。

細かいルール説明については「Mizuho New Trinsic News」でわかりやすく紹介されています。
http://tirinews.blog.fc2.com/blog-entry-1195.html

大和シャードの皆さま、代表チームの応援に奮ってご参加ください!

ロゴ提供 瑞穂シャード Sound Works氏

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◆開催日時:8月8日(土) 21時30分
◆集合場所:飛鳥シャードリワードホール東側(当日はルナ銀行とブリテイン広場にゲートを出します)
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注意事項:
◆当日はチャットチャンネル Ludo Japan へお入りください。
◆予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
– イベント進行の妨害、かく乱行為。
– EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!

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【全日本シャード】8月のイベント予定

平素はEMプログラムへのご理解とご協力ありがとうございます。
8月のイベント予定をお知らせします。

8月8日(土)
・21:30~ 飛鳥シャード【ミニイベント】Ludoゲーム世界大会準決勝(日本代表決定戦)

8月15日(土)
・21:00~ 飛鳥・無限シャード / イベント (未定)

8月16日(日)
・21:00~ 出雲・桜シャード / イベント (未定)

8月25日(火)
・22:00~ 大和シャード / イベント (未定) (仮日程)

8月26日(水)
・22:00~ 北斗シャード / イベント (未定) (仮日程)

8月29日(土)
・ 21:30~ 瑞穂・倭国シャード / イベント (未定)

8月30日(日)
・22:00~ 桜シャード評議会
・22:00~ 瑞穂シャード評議会

※8月の桜・北斗・瑞穂・無限シャードのミニイベントは開催されません。

コン太君のお母さんを助けよう(イベント)

※8/3 イベント当日のセリフ掲載しました

 

王立広報室・広報官のリシオです。

今回は、メネイエル様とコン太君からの依頼です。

 

 

事の発端は、コン太君のお母様が『ダゼル』という化け物に捕らえられてしまったことです。


お母様は幼い子供たちを身を挺して守り、敗れてしまいました。


ダゼルは子キツネなど、か弱い存在ばかりを執拗に狙う極めて卑劣なモンスターであり、他にも犠牲となっている子たちがいる可能性が高いのです。


すぐにでも救出に向かいたいところですが、一つ厄介な問題があります。ダゼルは意外なほど慎重な性格をしており、自分が勝てない強者が近づくと、決して姿を現しません。


そこで、皆様の強さを隠しつつ奴を誘き出すための『罠』を張ることにしました。


与力の綾瀬様が所有する『オーラリー装置』を使い、子キツネの幻影を大量に映し出し、奴を誘き出す作戦です。


しかし……あろうことか現在、その肝心の装置がクリドラの群れに奪われてしまっているのです。


皆様にお願いしたいのは、作戦の要となるこの『オーラリー装置』をモンスターの巣窟から取り戻し、卑劣な化け物の手からお母様を救うためには、皆様の力が必要です。

 

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◆開催日時:7月26日(日)21:00~   ※開始時間にご注意!
◆集合場所:Britain広場

※集合場所付近はリコールできないようになりますのでご注意ください。

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注意事項:
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
 - イベント進行の妨害、かく乱行為。
 - EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!

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プロローグ

 

 ここはブリテイン王立広報室。

 名称こそ「広報」と名乗っているが、その実態は情報収集や市民のお困りごと解決を最優先とする、いわゆる「よろず請負部署」である。


 今日も室長のネコマタコが、香り高い茶をカップに注ぎ、優雅な朝のひとときを堪能していた。ただ一ついつもと違うのは、空いた片手に物騒な『吹き矢』を握りしめていることだろうか。


「室長、それは吹き矢ですか?」


 リシオがジト目で視線を向けると、室長はピンと耳を立てて吹き矢を指さした。


「そうだにゃ。ゼントの夏祭りで手に入れたにゃん」


「夏祭りですか! いいなぁ、僕も行きたかったですよ。あの具が極端に少ない安っぽい焼きそばと、かき氷の組み合わせが最高なんですよね」


「……すごい組み合わせだにゃ」


 室長は心底嫌そうな、ドン引きした表情を見せた。


 無理もない。リシオの味覚、とりわけ食べ物の「組み合わせ」に対するセンスは、控えめに言って独特なものがある。


 一例を挙げよう。

 トクノエリアの名産に「たくあん」という大根の漬物があるのだが、リシオの最大の好物はこのたくあんと「牛乳」の組み合わせである。


 彼曰く「たくあんのコリコリとした食感に、牛乳の濃厚さが絶妙に絡み合い、噛めば噛むほど塩分が溶け出して最高に旨い」らしい。

 

 かつてそれを嬉々として熱弁された際、室長とマーキュリ先輩は揃って顔を引きつらせていたのだが、当のリシオ本人は未だにそのドン引き具合に気づいていなかった。


「組み合わせと言えば、今日は例の記者の人はいないようですね」


「……にゃ?」


 室長はカップを片手に首を傾げた。


 「たくあんと牛乳の凶悪な組み合わせ」から、一体どう脳内変換すれば「タウンクライヤー紙の記者・サラ」に繋がるのか。その強引すぎる話題転換にひどく苦慮したからだ。


「いや、見えないだけで、少し離れた茂みからこっちを見張っている気がするにゃ」

 

「しつこい人ですね」

 

「まったくだにゃ。あとでまた駆除用の煙でも焚いて……いや、せっかくだから吹き矢の試し撃ち……」

 

「煙? 吹き矢の試し撃ち?」

 

「なんでもないにゃ」

 


 しれっと目を逸らすネコマタコ。

 

 リシオは妙なところで勘が鋭いところがある。それは決して悪いことではないのだが、その鋭さを発動させるタイミングが常に絶望的であった。


 室長の不穏な言葉をこれ以上追及していいものか迷ったリシオは、不意に何かを思い出したかのようにポンと手を叩き、再び話題を切り替えた。


「ところで室長。先月の悪魔アルベルトの件ですが、無事にハテナさんの故郷へと移送されたんですよね?」

 

「移送はされたけど、ひと波乱あったにゃ」


 室長は、珍しく険しい表情で語りはじめた。


 彼女は悪魔の移送を見届けるため、森の賢者亭へ出向いたという。多くの常連客が見守る中、ハテナ自身が特別な呪文で次元のゲートを開き、悪魔の入ったクリスタルアークを抱えたセドラがいざ足を踏み入れようとしたその瞬間。

 

 どこからともなく、広報室の先輩であるマーキュ・リが現れたそうだ。

 

 そして開口一番、その世界に「ドラゴンは存在するか」と尋ね、ハテナとエックスが頷いたのを見るや否や、マーキュ・リも一緒にゲートへと飛び込んだらしい。

 

 最後に「室長、出張手当をよろしく!」というちゃっかりした言葉を残して。

 


「先輩はなぜ賢者亭に……?」

 

「奴の行動は、私にもさっぱり分からないにゃ」

 

「先輩はうちに滅多に来ませんが、ちゃんとお給料は貰ってるんですよね?」

 

「も、勿論払ってるにゃ。奴は特派員として、各地を回ってもらっているにゃ」

 


 室長は引きつった苦笑いを浮かべた。

 それは「細かいところまで突っ込むな、空気を読め」という上司からの無言の圧力だった。

 

 しかし、リシオは絶望的に空気を読まずに質問を続ける。


「最近は僕も慣れましたけど、先輩の場合は明らかに『異世界』に行ってますよね? それって規定上、出張になるんですか?」


「いや、その、なんだにゃ・・・」


「しかも、先輩は完全に個人の趣味である『ドラゴン探し』のために動いてますよね? 職務怠慢では?」


リシオの情け容赦ないド正論に、室長は珍しくたじろぐ。が、ここで天才的なインスピレーションを得た。

 


「……リシオ。まだまだ甘いにゃ」

 

「えっ。何か深い事情が?」

 

「ここは、なんと言う部署にゃ?」

 

「王立広報室ですが」

 

 

先ほどまでのしどろもどろが嘘のように、室長は自信に満ちたドヤ顔を浮かべた。

 


「そう。ここは王立の部署。つまり、王様から直接『密命』を受けることもあるのにゃ」

 

「そうだったのですか!」

 


 今までそんな話をほとんど聞いたことがなかったリシオは、心底驚いた。

 彼が広報室に入ってそれなりに年数が経つが、請け負うのは冒険者への依頼の仲介ばかり。

 

 確かに依頼人の層は特筆すべき凄腕や人外の者が多いが、王室からの直々の依頼など数えるくらいしかないのだ。

 


「そうにゃ。王様は密かにドラゴンの可能性を探っていて、マーキュ・リは秘密裏に各地へ探りを入れに行っているのにゃ」


「なるほど! 先輩にそんな重大な任務が課せられていたのですね。てっきり、ただの趣味でミズホという世界へ遊びに行っているだけだと思ってました」


「これはトップシークレットだから、他言無用にゃ」


(チョロいにゃ……)

 


 やっとリシオが納得してくれたことに、室長は密かに安堵の息を吐いた。

 その時、広報室の扉が勢いよく開かれ、そこには一人の女性と、一匹のキツネの姿があった。

 

 見覚えのある顔だと認識し、リシオが立ち上がる。

 


「これは、メネイエル様。そのキツネは新しいペットですか?」


 現れたのは、天界から落ちて戻れなくなっているという規格外の女神、メネイエルであった。


「ここの子はペットじゃない。コン太」


 ボッ! と煙が上がり、キツネだったコン太が瞬時に人の姿へと化けた。


「コン太です。今日は依頼があってきました」


「ば、化けキツネ!?」

 


 実はリシオ、キツネが人の姿へ変化する瞬間を生で見るのは初めてだったため、目を丸くして大層驚いた。

 


「し、失礼しました。詳しいお話を伺いますので、二階の応接ブースまでどうぞ」

 

「今日はみゃーも同席するにゃ」

 

◇◇◇

 

 ここは、トクノの森の奥深くにある、とある化けキツネの巣。

 薄暗い穴の中で、コン太は母の帰りを一匹寂しく待っていた。

 

 他の兄弟たちは既に立派に巣立ちを終えており、巣に残っているのは末っ子のコン太ただ一匹。

 

 しかし、頼みの綱である母キツネがここ十日近く帰ってこず、コン太はすっかり心細くなっていた。

 

 コン太自身も少しばかりの狩りはできるようになっており、最低限、一匹で食いつなぐことはできる。

 しかし、まだまだ母に思い切り甘えたい盛りの年頃なのだ。


「今日も帰ってこないコン……。心配だなァ」


 思わず声をだし呟くコン太。


 最近、トクノの周辺では『幼い子が神隠しのように拐われる』という物騒な噂を耳にする。


 母は力のある大人の化けキツネではあるが、何か恐ろしい事件に巻き込まれたのではないかと、コン太の小さな胸は不安で押し潰されそうであった。

 

 

 翌日。

 待ちくたびれたコン太は、ついに自ら母を探しに行く決心を固めた。

 

 微かな母の香りを頼りに住み慣れた森を抜けたところで、その痕跡はぷつりと途絶えてしまった。

 

 それでも勇気を振り絞ってさらに先へと進むと、やがて人の住む賑やかな町が見えてきた。


(ここは確かゼントだったかな。人の町に入るときは、ちゃんと変身しないとね)


 コン太は、かつて母に教わった通りに変化の術を使う。ポンッとわずかな煙が上がり、それが晴れると、そこには可愛らしい人間の男の子の姿があった。


 ただ、まだ変身の術が完璧ではないため、お尻から小さなキツネの尻尾がひょっこり飛び出してしまっているのだが——本人はまったく気にしていなかった。


 トコトコと町に入ったコン太は、不思議な飾り付けを目にして足を止めた。

 町の中心部にある広場に、立派な笹が大量に飾られており、そこに色とりどりの小さな紙が括り付けられていたのだ。


 町の人々が、その紙に何やら熱心に書き込みをしては笹に吊るしている。

 不思議に思って覗き込んでみると、そこにはこんな言葉が並んでいた。


『大金が入りますように……』

『毎回リワードが出ますように……』

『与力の綾瀬が失脚しますように……』

『みやびの女将さんと遊びに行きたい……』

『三十周年でギャリ夫に会えますように……』

『邪神を暗殺できますように……』

『未知の植物が発見できる!』

『またサキちゃんが遊びに来てくれますように……』


 切実な祈りから、生々しい欲望、果ては物騒な暗殺計画まで、多種多様な願望が笹の葉に揺れていた。


(人間って、いろんなお願い事をするんだなァ……)


 コン太が目を丸くして眺めていると、そんな混沌とした短冊の群れの中に、ふと一枚の小さな紙を見つけた。そこには、たどたどしい文字でこう書かれていた。


『早くお父さんが帰ってきますように』


 それは、一人ぼっちで母を待つ今のコン太の心境と重なる、純粋で切実な願いだった。


(ここに願い事を書くのかな……)


 コン太も見よう見まねで『お母さんが早く帰ってきますように』と短冊に書き込み、笹に結びつけてから町をあとにした。


 この時、コン太は「人間の町って面白いなァ」と心底思っていた。

 たくさんの人々が行き交い、活気あるお店が立ち並び、屋台や食べ物屋があちこちにある。

 化けキツネであるコン太は、耳も良ければ嗅覚も鋭い。人々の面白そうな会話もよく聞こえるし、美味しそうな匂いも森の中とは比べ物にならないほど豊富だった。


 何より、こうして町に集まる様々な情報に耳を傾けていれば、母の行方につながる手がかりを得られるかもしれない。

 

 それからというもの。次の日も、また次の日も、コン太は母の探索がてら町へ立ち寄っては新しい短冊に願い事を書き、町の様子を見て楽しむようになった。


 そんなある日、コン太の頭に『ピン』とひらめき、ひとり呟く。


「そうだ! あの笹ごと持って帰って巣にいっぱい飾れば、もっと願いが叶いやすくなるかもだコン!」


 コン太は人目を盗んではこっそりと広場の笹を引き抜き、自分の巣穴へと持ち帰るようになった。


 せっせと笹を持ち帰ること数回。ある日の探索中、ついにコン太は、探し求めていた『母のはっきりとした香り』を森の中で捉えたのだ。


「願いが叶ったコン!」


 コン太はちぎれんばかりに尻尾を振り、喜び勇んで母の香りをたどっていった。

 そして、香りの行き着いた先。見慣れぬ別の巣穴へと飛び込んだコン太は、そこで予想外の光景に目を丸くして驚愕することになる。


 巣穴の奥に広がっていたのは、予想だにしない凄惨な光景だった。


 見たこともないおぞましい化け物と対峙するように、大人のキツネが立ちはだかっている。それはコン太が探していた母であった。

 

 

 そしてその後ろには、コン太よりもさらに小さな子キツネたちが身を寄せ合い、ガタガタと震えていた。


 身を挺して幼子たちを護っていた母が、ふと入り口に立つコン太の気配に気付く。

 

「コン太!? なんでここに!」


「かーちゃんを探してたんだよ!」


「ここは危ない! 早く逃げな!」

 

 切羽詰まった悲痛な声。後ろで怯える小さな姿を見て、コン太は直感でピンときた。


 あの子たちは、きっとお母さんの新しい子だ。どことなくお母さんの面影があるし、いわば僕の弟や妹たちに違いない。

 

(兄たちが巣立ってから、かーちゃんの姿を見なくなる日が増えたのはそういうことか)

 

 その時、おぞましい姿の化け物がギョロリと濁った瞳を動かし、コン太の存在に気づいた。

 

「……チッ。お前は少し育ちすぎているな。肉が硬くて旨くなさそうだ。無駄死にしたくなければ、とっととあっちに行け」

 

 地を這うような化け物の凄まじい気迫に、コン太は思わず尻尾の毛を逆立て、怖じ気づきかけた。


 しかし、荒い息を吐く母の体を見ると、すでに痛々しい傷がいくつも刻まれているのが分かった。

 

(かーちゃんが危ない……。僕が、僕が守らなきゃ!)

 

 ガクガクと震える足にギュッと力を込め、心の中で固く決心するコン太。

 だが、彼が一歩前に踏み出そうとしたその時、母がことさら強い語気で叱りつけた。

 

「コン太! あんたは昔からドジなんだから、ここに居ても足手まといだよ! さっさと逃げな! かーちゃんなら、こんな奴どうってことないんだから!」

 

 言い放つと同時、母の体がどろりと煙に包まれたかと思うと、目の前の化け物と瓜二つの恐ろしい姿となって突進した。


 化けキツネは、相手の姿だけでなくその能力をも模倣することができるのだ。

 己とまったく同じ姿の巨大な敵が迫ってくるという予測外の事態に、さしもの化け物も一瞬怯んだ様子を見せた。


「今だコン!」


 その隙を見逃さず、コン太も弾かれたように駆け出した。

 母の猛攻からわずかにタイミングをズラし、死角から化け物の足元へと決死の体当たりを食らわせる。


「コン太! ぐずぐずしないで、あの子達を連れて逃げな!」


「でも、かーちゃんが心配だよ!」


「いいから、言うことをお聞き!」


 怒声を飛ばす間にも、母は容赦なく化け物に食らいつき、着実にダメージを与えているようだった。


(ひょっとしたら、かーちゃんなら勝てる……!?)


 母の渾身の戦いぶりに一縷の希望を見出したコン太は、後ろでガタガタと震える幼い弟妹たちを促し、素早く巣穴の外へと連れ出した。


 ここから一番近い安全な避難先は、あの『人間の町』だ。

 森を駆け抜けながら、コン太は弟妹の中で一番大きな子に「人の姿に化けて町に入り、そこで待っているように」と急いで伝えた。


 まだ幼く変化の術が使えない末っ子の妹には、「飼われているペットのフリをするんだよ」と固く言い聞かせる。


 これはかつて、母から教わった生き残るための知恵だった。人間の町では、人の姿さえしていれば無闇に攻撃されることはないのだ。


「絶対に町から出ちゃダメだコン!」


 弟妹たちが無事に森を抜けていくのを見届けたコン太は、やはり一人で戦う母の安否がどうしても気になり、踵を返して再び巣穴へと全速力で引き返した。

 

 そして。

 息を切らして飛び込んだ巣穴の中で待ち受けていた光景に、コン太は息を呑んで驚愕した。


「坊主、戻ってきたか。お前のかーちゃんは、ご覧の通りこのザマさ。変化した時は一瞬驚いたが、所詮は下級魔獣だな」


 化け物の足下を見ると、そこには本来のキツネの姿に戻り、化け物の巨大な足の下で無惨に踏みつけられている母の姿があった。


 化けキツネの能力変化は、所詮は表面的なモノマネに過ぎない。本物の持つ圧倒的な力の前には、到底敵わなかったのだ。


「コン太、あの子達を……頼んだよ……」


 虫の息のような母のか細い声に、コン太は頭を殴られたようなショックを受けた。


「こいつを助けたければ、逃がした子キツネどもを連れてこい。悪いようにはしないさ」


「コン太、ダメだよ! こいつは食べる気だ。坊や達を絶対に連れてきちゃ――ギャッ!」


「やかましい。黙ってろ」


 化け物が容赦なく母の腹に重い蹴りを叩き込む。あまりの衝撃に、母は声も出せずに気を失い、ぐったりと動かなくなってしまった。


「やめろぉっ! この化け物!!」


「ヒヒッ。俺には名があるんだぜ。蹴るのを止めて欲しかったら『ダゼル様』と呼べや」


 コン太は口内に血が滲むほど強く歯を食いしばり、今にも爆発しそうな怒りを必死に喉の奥へと押し殺した。


(ダメだ、今の僕じゃ絶対に太刀打ちできない。落ち着くんだ……冷静に判断するんだ、コン太!)


 もしコン太がすでに大人に成長していて、優秀な化けキツネであったなら。母と一緒に戦うことで、あるいは勝機を見出せたかもしれない。


 だが、今はそんなタラレバを悔やんでも仕方がない。余計な感情を捨て去り、ギリギリのところで冷静さを取り戻したコン太は、屈辱に身を震わせながらも、次に浮かんだ言葉を絞り出すように口にした。


「ダゼル……さま。どうか、かーちゃんを助けてください」


 自らをダゼルと名乗った化け物は、深い優越感に浸るように下劣な満面の笑みを浮かべた。


「よく分かってるじゃないか、コン太。俺もお前のことを信じて待ってるぜ。さぁ、早く連れてきな」

 

 絶望的な約束を交わし、這うように巣穴から飛び出したコン太は、一路『ゼント』の街を目指して駆け出した。


 まずは、町へ逃がした弟妹たちと無事に合流しなければならない。


 弟妹たちの匂いをコン太はしっかりと覚えていたため、広い町の中でもすぐに合流することができた。


「お母さんは大丈夫なの? 兄ちゃん?」


「お前たち、名前はあるのか? 僕はコン太だ」


「俺はタ太。こっちは琴ネだよ」


 タ太は、隣でうずくまって震えている小さな子狐を指さした。


「タ太、琴ネ。よく頑張ってここまで逃げてきたな。かーちゃんのことは僕に任せておけ。いい考えがあるんだ」


「兄ちゃん、かっけー!」


 タ太は目をキラキラさせてコン太を見つめる。妹の琴ネも同様に、頼もしい兄へと尊敬の眼差しを向けていた。


 力強く言い切ったものの、実は完全にノープランのコン太。

 今の彼に思いつくことと言えば、広場にあるあの笹に願い事を書くくらいしかなかった。

 コン太たちは町の広場へ移動し、短冊に切実な願いを書き込んだ。


(神さま。いるなら、どうかかーちゃんを助けてください。一生のお願いです……!)


 目を閉じて心の中で強く祈った、その時。


「呼んだ?」


 突然、背後から女性の暢気な声が聞こえ、コン太はビクッと肩を揺らして振り返った。


 驚きのあまり、一瞬だけ変化が解ける。 

 

 

「化けキツネだったか」


 そこには、全身が淡い緑色の光に包まれた女性が立っていた。確かに神々しく見えなくもないが、唐突すぎてこの上なく怪しい。


「あんた、誰?」


 人の姿に再び変化したコン太が問いかける。


「私はメネイエル。慈愛と灯火と忍耐の女神。わけあって下界に落ちてきたのだけれど……決して、ドジでポンコツで食いしん坊な女神ではない」


「そ、そうか……」


(また変なヤツに絡まれたコン……)


 コン太は警戒レベルを最大に引き上げた。


「兄ちゃん、この人なに? なんかすごく危ない気がする……」


「タ太、目を合わせるな。この手のタイプは刺激しちゃダメだって、かーちゃんが言ってた」


 ヒソヒソと弟と耳打ちを交わしてから、コン太は自称女神へと視線を戻す。


「ありがとう、メネイエルさん。お気持ちだけ受け取っとくよ」


「神前で嘘はつけない。あなた、さっき心の中で『かーちゃんを助けてください』って祈ったでしょ?」


「心のなかが読めるのか!? お前、さては凄腕の詐欺師だな!?」


 詐欺師呼ばわりされたメネイエルは、ムッとして不満げに頬を膨らませた。


「それは心外。私は正真正銘の女神メネイエルよ」


「だったら証拠を見せてみろよ!」


「分かったわ」


 メネイエルが短く応じると、彼女の頭上に神々しい光輪が現れ、ふわりと温かく淡い緑色の光を放ち始めた。


 その光を浴びた瞬間、コン太は心身の疲労や恐怖がスーッと癒されていくのを感じた。タ太や琴ネも同様だったようで、先ほどまで怯えていた表情が嘘のように、すっかり安堵に満ちた顔になっている。


「これは……本物だ……」


 コン太はぽかんと口を開けたまま、完全に固まっていた。

 目の前の怪しい女性が『本物の女神』だと信じたコン太たちは、藁にもすがる思いで彼女にこれまでの事情を打ち明けるのだった。


「それは酷い。力を貸す。だけどその前に女将さんに相談」


 メネイエルはコン太たち兄妹の安全を確保するため、自身の職場である『お宿みやび』の女将に掛け合うことにした。


 事情を聞いた女将のナナセは快諾し、問題が解決するまで、みやびの空き部屋で兄妹を匿ってくれることになった。まだ幼く人の姿に化けられない末妹の琴ネは、表向きは「怪我をした保護キツネ」として預かられることになった。


 コン太たちは、みやびに併設されているサケサカにいた。

 ダゼルの目的は子キツネたちだ。コン太は一刻も早く母を助けに戻りたかったが、夜の森は視界が悪く危険が多い。


 化け物に対抗する作戦も練らずに突っ込むのは愚策であると理解していたため、逸る気持ちを抑えてメネイエルの提案を受け入れ、今夜はみやびに泊まることにしたのだ。


 見慣れた給仕の衣装に身を包んだメネイエルが、コン太たちに品書き(メニュー)を見せる。


「みんな、好きなもの注文して」


 メネイエルが促すと、コン太たちは品書きに描かれた美味しそうな挿絵に目を輝かせ、あーでもないこーでもないと食べたいものを選び始めた。


「ねぇメネイエルさん、お酒って美味しいの?」


「子供は飲んじゃダメ」


 即答されてしまい、コン太はあからさまに唇を尖らせて拗ねた。


「俺はキツネだから大丈夫だコン!」


 コン太が強がると、タ太も「僕も飲みたい!」と言い始め、キツネの姿のままの琴ネまでもが小声で同調する。


「ダメなものはダメ。諦めなさい」


「……チッ」


 舌打ちするコン太だったが、その後、湯気を立てる色とりどりの料理が運ばれてくると、お酒の一件など一瞬で忘却の彼方へ。


 初めて食べる人間の世界の食事は、ほっぺたが落ちるほど美味しかった。


 母は時おり人に化けては町の食堂に通っていたらしく、その時の「美味しい思い出話」を何度もしてくれていた。コン太も、一人前に化けられるようになったら絶対に町で食事をしようと夢見ていたのだ。


(かーちゃん、人間のご飯、すっごく美味しいよ……!)


 不意に訪れた目標達成の喜びに、コン太は少しだけ目を潤ませながら料理を夢中で頬張った。

 

 食後は、みやび自慢の広々としたお風呂で初めての入浴タイムだ。

 

 すっかりお湯の温かさにほだされたタ太は、変化の術が解けてしまい、キツネの姿に戻ってふにゃふにゃにリラックスしている。琴ネに至っては、極楽気分で仰向けになり、ぷかぷかと湯船に浮かんでいた。


 ナナセの粋な計らいで大浴場の一部を貸し切りにしてくれたため、メネイエルも一緒に入浴し、石鹸の泡立て方や湯船の浸かり方を優しく教えたのだった。
 

 その後は、火照った体を冷やしつつ、あてがわれた客室の布団に並んで転がった。

 優しくて強い母の思い出話をしながら、兄妹は寄り添って絆を深め合う。メネイエルも、ドジ……ではなく、天界でのちょっぴり笑える面白話を聞かせ、子どもたちの不安を和らげた。


 いつしかスースーという寝息が重なり、温かな空気に包まれながら夜は静かに更けていった。


◇◇◇


 翌日。

 コン太はメネイエルを連れて、母が囚われている巣穴へと向かった。


「おかしいコン……。昨日は確かにここにいたのに……」


「周囲を索敵しても、ダゼルの反応は全くない」


 警戒しながら周辺をくまなく探したが、結局化け物は姿を見せなかった。

 その代わりに残されていたのは、地面に無造作に落ちた『血の付いたキツネの毛』だった。生々しいその匂いからして、母のものであることは間違いない。


「これは、ダゼルからの警告」


「俺もそう思うコン……」


 血の付いた毛を握りしめ、コン太は悔しげに顔を歪めた。


 ただ、メネイエル曰く、直前までダゼルがここにいた気配は色濃く残っているという。


 下界に落ちて神としての権能を失いつつあるとはいえ、メネイエルが放つ神気は、コン太から見ても尋常ではない力だと肌で感じていた。


 それはきっと、ダゼルから見ても同様だったのだろう。

 得体の知れない強力なオーラを持つメネイエルを警戒し、あえて直接対決を避けて姿を隠したのだと、コン太は推察した。


「わざわざ、かーちゃんの毛を残していくってことは……」


「子キツネ以外を連れてきたら、母親の命の保証はしない。そういう陰湿なメッセージ」


 ややあって、メネイエルが口をひらく。


「……一旦、みやびに戻って作戦会議しよ」


 メネイエルは静かにそう告げ、最善の策を練り直すべく踵を返し、コン太が後に続く。

 

 みやびに戻ったコン太達は、女将のナナセに事の顛末と状況の報告を行った。

 

 ナナセは腕を組み、何かを思い出すかのように考え込んでいたが……ふと、コン太の弟妹たちへと視線を向けた。


 彼らは部屋の隅で、笹に飾られた七夕飾りの『星』をつついて無邪気に遊んでいる。
それを見た瞬間、ナナセの頭に天啓が閃いた。


「星だわ!」


「びっくりしたコン!?」


「……同じく」


 重い沈黙を破るナナセの突然の大声に、コン太は尻尾の毛を逆立てて飛び上がり、メネイエルも目を丸くして驚いた。


「ごめんなさい。でも、すごくいいことを思いついたの。星の動きを示す機械式の模型があるんだけど……」


「ファンタスマゴリック・オーラリーね」


 ナナセの言わんとしている意味を即座に理解したメネイエルは、それが現在どこに保管されているのかを尋ねる。


「ええ。綾瀬様が持っているのよ」


「奉行所で与力をしてる人ね?」


 メネイエルの問いに、深く頷くナナセ。

 ポンポンとテンポ良く進む二人のやりとりに、完全に置いてきぼりを喰らっていたコン太は、目を白黒させながら心の中で呟いた。


(この人たちはいったい、何について話しているんだコン……?)


 ポカンとしているコン太の表情に気づき、ナナセが優しく微笑みながら概要を説明してくれた。

 

 『ファンタスマゴリック・オーラリー』は、本来は星の動きを立体的に示す精巧な機械式の装置だが、実は他の使い方もできる。装置にセットする「星」のパーツを、別のものに入れ替えることが可能なのだ。


 与力の綾瀬は、奉行所で定期的に寺子屋を主催しており、そのオーラリー装置を使って様々な生物や植物の幻影を壁や天井に映し出し、子供たちに教えているのだという。

 


「なるほど! そのパーツを『子キツネ』に変えれば、大量の子キツネの幻影を映し出せるってことだね!」


「その通りよ、コン太君。察しが良いわね」

 


 理解の早いコン太を褒め、ナナセが優しく頭を撫でる。

 

 すると、褒められたのがよほど嬉しかったのか、あるいは安心したのか、コン太の頭から『ポンッ』と本物のキツネの耳がひょっこり現れてしまった。

 


「よし、善は急げ。さっそく奉行所に行こう」

 


 ピコピコと動く可愛らしいキツネ耳にはあえて突っ込まず、メネイエルは立ち上がると、コン太を連れて綾瀬のいる奉行所へと向かった。


 道中、メネイエルはコン太に、奉行所という場所が人間の町においてどのような役割を果たしているのか、そして大名を中心としたこの国の仕組みについて、丁寧に噛み砕いて教えた。


 母親から「人の町に入るならルールを守れ」と断片的に聞いていたコン太は、メネイエルの説明によって、その教えの本当の意味や町の構造が「点と点が繋がった」かのように理解でき、深く納得した様子であった。


 一通りの説明を終えたタイミングで、二人は奉行所の門前に到着した。

 

 コン太はその威圧感に思わずメネイエルの後ろに隠れたが、門番がメネイエルの顔を確認すると鋭い目つきから一転。すぐに綾瀬のところへ通してくれた。


 メネイエルのゼントにおける「顔パス」ぶりの凄さを、コン太は肌で感じた。


「これはこれはメネイエル様。本日はどのようなご用向きで?」

 
 綾瀬の部屋は畳敷きで立派だった。

 彼は来客中のようであったが、メネイエルの突然の訪問に驚き、慌てて立ち上がった。


 奥には、豪華な着物を金に糸を紡いだような気品ある女性が座っており、綾瀬はメネイエルの素性を知っているため、その女性を一旦待たせてメネイエルに対応しようとした。


 コン太から見ても、その女性は尋常ではなく偉い方のように見えたのだが……。


「綾瀬、そちらの人間を待たせても大丈夫なの?」

 

「こちらは大名様のご息女である姫様にござります」


 言って、綾瀬は深々と頭を下げて紹介し、ミツ姫に視線を移す。ミツ姫は優雅に会釈をした。


「メネイエル様、お初にお目にかかります。ミツにございまする。綾瀬とナナセから、女神様のお噂はかねがね」

 

「ミツ姫、私はメネイエル。慈愛と灯火と忍耐の女神」

 

「存じておりますとも、女神様。我が領地に住まわれていただき光栄にございます。父上も、ぜひ一度屋敷へとお招きしたいと」


 大名屋敷への招待は以前からあったが、メネイエルはナナセの「宿みやび」の居心地と、ナナセの作るご飯を気に入っており、固辞し続けている。


「ゼントは住みやすいし、ナナセのご飯も美味しいから気に入っているわ。招待の件はまた今度。それより綾瀬、あなたに緊急の用事があるの」

 

「綾瀬、メネイエル様のご要望は必ず受け入れるよう、私からもお願いしますね」

 

「はっ! 心得ております、姫様」


 メネイエルは、後ろに隠れていたコン太を前に引き出し、その正体と、ダゼルに母親が囚われていること、そして救出のために『ファンタスマゴリック・オーラリー』装置による幻影が必要であることを説明した。


 コン太の事情を知り、ミツ姫は同情の眼差しを向け、綾瀬は装置の貸し出しを快諾してくれたが……その表情は思わしくなかった。


「綾瀬。何か問題でもあるの?」

 

「いや、その……、大変申し上げにくいのですが」


 肝心のオーラリー装置が、なんと昨夜、何者かに奉行所の宝物庫から盗まれたというのだ。非常に高価で危険なものでもあるため、装置には魔力による追跡術式がかけられており、綾瀬はこのあと直々に捜索隊を率いて向かう予定であったらしい。


 ミツ姫が奉行所に来ていたのも、その緊急事態について大名家としての関心と心配による見舞いであった。


「それなら、私とコン太が先に見に行くわ。追跡術式の信号があるなら、神の権能を使えば簡単よ」

 

「メネイエル様! 滅相もございませぬ。そのような危険な場所へ、女神様をご迷惑をお掛けするわけにはいきませぬ」

 

「そうです女神様。これは奉行所の、綾瀬の管理責任にございます。女神様の手を煩わせるなど……」


 綾瀬は即座に精鋭の捜索隊を結成し、探しに行くという。しかし、コン太にとっては、これは一分一秒を争う母親の命がかかった問題だ。

 

 メネイエルは時間がないことを強調し、綾瀬達の反対を押し切って、コン太と二人で先行して装置を探しに行くことになった。


 メネイエル自身、今の自分は権能を失いつつあり直接的な攻撃能力は高くないと自覚していたが、索敵や隠密、そして神の気配による威嚇などを使えば、人間の捜索隊よりも遥かに早く、かつ穏便に解決できると信じていたのだが……。


「……これはアカンやつ」

 

「……俺も無理だコン」


 目的地の近くに到着した途端、メネイエルとコン太は同時に驚愕し、その場に崩れ落ちんばかりに意気消沈した。


 追跡信号が指し示す洞窟は、何者かが意図的に置いた巨大な岩で完全に塞がれており、奥に進むことができない。岩自体は、今のメネイエルの権能を少し使えば、なんとか動かせないレベルではなかったのだが……問題はそこではなかった。

 

 岩の隙間から、洞窟の奥を覗き込んだ二人の視界に飛び込んできた光景は、まさに絶望的であった。


 洞窟の奥は、無数に煌めく、そしてヤル気満々の殺気を放つクリドラの群れで埋め尽くされていたのだ。


「コン太、予定変更。一緒にブリテインへ行こう」


「ブリテイン? 遠いんじゃ……それに、そこに何かあるの?」

 

「あそこには『王立広報室』があるわ。そこに行けば、強力な『冒険者』たちに助けを求めることができる。……悪いけど、あれは今の私の手に負えるレベルじゃないわ」


 メネイエルは神としての直感で即座に撤退を判断し、コン太を連れて広報室へと足早に向かった。

 

◇◇◇

 

 広報室でメネイエルとコン太が依頼内容を話していたころ。

 

 少し離れた茂みの中では、タウンクライヤー紙の記者・サラが『Spyglass(望遠鏡)』を片手に窓を覗き込んでいた。


「ふふん。これがあれば、離れたところからでも広報室の動きをバッチリ監視できるだがや。流石は天才記者のわたしだわ」


 自画自賛しながら、サラは自慢の『読唇術』で室内の会話を読み取っていく。

 
「今回の依頼主は、自称女神と見慣れない子キツネだぎゃ」

 
 サラは読み取った言葉をブツブツと声に出しながら、首から下げたメモ帳へ怒涛の速さで書き起こしていく。


「なになに……コン太の母を助けたい。与力の綾瀬が持っている『オーラリー装置』を取り戻したい……と。うーん、オーラリーってなんだぎゃ?」


 記者を名乗るなら知っていて然るべき単語だが、サラは知識に著しい偏りがあるため仕方のないことであった。


「ふむふむ。いまはその子キツネの兄妹を、ゼントの宿屋みやびで預かっていて……あれ? 見えないだぎゃ」


 Spyglassの向きを少し調整すると、不意に視界のど真ん中へ、室長の姿が割り込んできた。しかも、なぜかピンポイントでこちらの茂みを見下ろしているように思える。


「なんでこっちを見てるがや? さすがに気のせい……だぎゃ??」


 なかなか窓辺から移動しようとしない室長に、サラは痺れを切らしてSpyglassの倍率を上げた。すると、彼女が吹き矢のようなものを手に持っているのがハッキリと見えた。


「ネコ・マタコは一体、何をする気だがや? ん?? あれを口元に持って行って……」


 プッ。

 その瞬間、サラの首元に『チクり』と鋭い痛みが走った。

 


「強力な虫よけ魔道具『虫くるな~ズ』を身に着けているというのに……最近のやぶ蚊は恐ろしい奴らだがや!」


 サラは前回の反省を活かし、ショーパンのベルトに虫よけグッズをフル装備して万全の態勢で臨んでいた。それなのに刺されるとは、なんという凶悪な蚊か。


「……あれ? なんだか、また頭がクラクラしてきたがや……。急に、眠く……」


 前回も似たようなパターンで気を失った記憶がフラッシュバックしたと同時に、サラは茂みの中へドサリと倒れ込んだ。


 次第に薄れてゆく視界。泥のような眠気に抗いながら薄く目を開けると、そこにはいつの間にか外に出てきたネコマタコが、冷ややかな目で見下ろしていた。


「おのれ、ネコマタコ……。いつの間に……瞬間移動か……? おい……わたしの特ダネ……メモ帳を……」

 

「あれほど盗み聞きはよくないと警告したはずだにゃ」


 サラが恨み言を言い終える前に、その意識は完全に途絶えた。


 手際よく特ダネのメモ帳を没収した室長は、気絶したサラを茂みの奥深くに足でぐいぐいと押し込んで外から見えなくすると、何事もなかったかのように優雅な足取りで広報室へ戻っていった。

 

 

◇イベント当日のセリフ

 

●スタート:ブリテイン広場

(K コン太)
! みなさん、こんにちは
! 化けキツネのコン太といいます
! お集まりくださいましてありがとうございますだコン
! 本日お願いしたいのは、ファンタスマゴリック・オーラリーの奪還と
! 僕のかーちゃんの救出だコン

! 経緯を説明します
! 僕は3兄弟の末っ子で、兄たちは既に巣だっています
! 僕もその時期だったのだと、今では分かるのですが
! その時はまだかーちゃんに甘えたいなと思っていたコン

! 真ん中の兄ちゃんが巣だったあたりから
! かーちゃんが巣に戻ってくる頻度が少なくなり
! 半月前を境に帰ってこなくなったんだ
! そこで僕は意を決して、かーちゃんを探しに行くことにしたんだコン

! なんとか、かーちゃんは見つかったんだけど
! 別の巣穴で子供を育てていたんだ
! 既に巣だっていないといけなかったのに
! そこで迷惑をかけていたこことに気づいたんだ
! それで久しぶりに、かーちゃんと会えたんだけど
! ダゼルという化け物と戦っていたコン
! 僕も一緒に戦ってみたけど
! まったく歯が立たなかったんだ
! それでも、かーちゃんが身を挺してくれたおかげで
! 弟妹を逃がすことができただコン

! その後、逃がした弟妹とゼントで合流して
! この先どうするか考えていたら
! メネイエルという天界から落ちてきて
! 戻れなくなった女神様と
! お宿みやびのナナセさんが力になってくれて
! 弟妹を匿ってくれることになったコン

! 次に、かーちゃんを助ける作戦を考えることになったんだけど
! ナナセさんの発案でオーラリー装置というものを使うことにしたコン
! ファンタスマゴリック・オーラリーといって
! 星の動きを示す機械式の模型なんだけど
! 光源の部分に、子キツネの模様を貼り付けると
! キツネがたくさんいるように映し出せるんだ

! ダゼルの狙いは子キツネだからね
! それを使って奴を誘き出す作戦だコン

! ただ問題があって、オーラリーが何者かに盗まれたんだ
! 追跡魔法のおかげで、場所は分かるのだけど
! クリドラがいっぱいいて取り戻せないんだ
! 今から、みなさんの力をお借りして
! クリドラを倒し、オーラリーを奪った者から奪還
! その後、ダゼルを誘き出して
! 僕のかーちゃんを救出するという流れになるコン!
! 移動前にチャットに入ってね


! Yamato EM Eventね

, コンコン~

! ゲート出すから入ってね!
! 移動したら、ダンジョンに入って奥へ進もう
! 強いモンスターも出るみたいだから注意ね
! 発見したら、チャットに報告をお願いするコン

 

●ダンジョン1

(K コン太)
! みんな揃ったかな?
! 丸っこい奴の上にあるのが探しているオーラリーだコン
! こんにちは、丸い方

(R ロックボール)
! なんだお前ら?

(K)
! 僕たちは、そのオーラリーを取り戻しにきました
! それは奉行所から持ち去られたものです

(R)
! 返さないよ。頭上でくるくる回ってると調子がいいんだ
! 俺の精神安定剤さ
! それと所有権は俺にある

(K)
! そんなの屁理屈だ
! 返して欲しいだコン

(R)
! お前、自力救済の禁止を知らないな?
! 取り戻すには、裁判所や奉行所などの公的手続きを経てから行うのが一般的だ
! だから返さない

(K)
! 奉行所から持ち去っておいて、どの口がいってるのだコン!

(R)
! あいにく、俺には目しかないんだな
! いまも目を器用に使って話してるんだぜ

(K)
! すごい、ちょっと興味あるコン

(R)
! お前いい奴そうだな
! うーん。そうだな。俺みたいなスゲー奴を見せてくれたら
! これを返してやらんでもない

(K)
! 本当に?
! あの、お名前は?

(R)
! 俺はロックボールさ
! みたまんま

(K)
! 名前もカッコいい!
! お友達になってコン

(R)
! いいぜ!
! 俺も寂しかったんだ
! 仕方ないな、友情の証にこれを返してやるよ

(K)
! やったー
! ロックさん、男前だコン

(R)
! おう。さっさと持って行きな
! でも、お前ら帰ってしまうんだろ?
! なんかちょっと寂しいな

(K)
! じゃ、誰か残していくね
! みんなの中から、ロックさんのお友達候補を何名かピックするね
! 選ばれた人は、ロックさんとずっとここで暮らしてね

※何名か適当に引っ張る

(K)
! これだけいれば楽しく過ごせるよね

(R)
! 助かるぜ
! 俺はこんな姿だから友達がいなくてよ
! 寂しかったんだ

! 自分を見つめ直す一人旅でゼントへ行った時
! くるくる回る面白いものを見たから持って帰って来たんだ
! ただ、頭に乗せても、見てくれる奴がいないから空しかったぜ

(K)
! それは辛かったね
! これからはみんなと仲良くね
! また僕も弟たちを連れて遊びにくるね

(R)
! おう!待ってるぜ

(K)
! それじゃみんな
! つぎはかーちゃんを助けに行くよ!

! 残る人に挨拶していこう
! もう会えないかも知れないし
! サヨウナラコン


●ダンジョン2 ~ボス戦

(K コン太)
! みんな揃ったかな?
! ここにいる大きいのが、かーちゃんを暴行して拉致監禁している奴だコン

(D ダゼル) 
! もう少し紹介のしかたってもんがあるだろ坊主
! まぁでも、でかしたぞ。こんなに大量の子キツネを集めるなんて
! うまそうじゃねーか

(K)
! いまみんなの姿は子キツネに見えてます
! かなり大変だったコン
! 約束通りかーちゃんを返して

(D)
! 暴れるから痛めつけて黙らせてある
! 蜘蛛の糸でぐるぐる巻きにしてな

(K)
! かーちゃん、もう少しの辛抱だよ

(D)
! しかし、あれだな
! 冷静に考えると、こんな数の子キツネどうやって集めたんだ坊主?

(K)
! えっと、その・・・
! 美味しいものをくれるおっさんがいるって言ったら
! これだけ集まったんだ

(D)
! 俺はまだおっさんじゃねー
! でもなんか、口から触手を出す生臭い奴もいるし
! 人間の臭いがするやつも
! 空中で滑空してるのもいるし、ドラゴンを連れてるのもいるのだが

(K)
! え・・・
! そうそう、僕たちは化けキツネだから
! みんな好きな姿に化けてるんだ
! だから早くかーちゃん返して

(D)
! そうか、お前ら化けキツネだったな
! よし、約束通り母を連れていくといい
! いや~しかし、母のために子キツネを騙すとは
! お前も悪い奴だな。ハハハハ。どうだ俺と組まないか?

(K)
! え・・・
! とっても魅力的な提案だコン

(D)
! だろう?
! 油揚げ食い放題だぞ

(K)
! え・・・
! それは更に魅力的だコン

(D)
! よし。商談成立だ。確かコン太だったよな
! ここから移動するから、子キツネ達の誘導を頼むぞ

(K)
! 分ったコン

(D)
! ゲートを出すから
! うまいこと誘導しろ
! 全て終わったら、母を連れて帰っていいぞ

(K)
! 分ったコン

※ゲート出現

(K)
! それじゃみんな、移動するコン


●戦闘エリア

(K)
, 誘導完了だよ、ダゼルさま


(D) 
, おう、ご苦労さん、母を連れて帰りな
, また連絡するわ、ってお前騙したな。よく見たら冒険者じゃねーか
, ここまで来たら逃げれねーな、覚悟して始末するか

(K)
, みんな、気をつけて!


※ボス戦開始


(K)
, まだ戦っているお友達がいるから応援するコン~

※戦闘終了

(K)
, みなさんのおかげで、かーちゃんを取り戻せただコン
, ありがとう!
, ブリに戻ろう


●〆:ブリテイン広場

(K)
! みなさんのおかげでかーちゃんを取り戻せただコン
! ありがとう


! かーちゃんは先にゼントへいきました
! これで兄弟とも再開できるしうまくいっただコン

! これから僕は巣立ちして、りっぱな化けキツネになるコン
! 近いうちに、変化してみんなを騙しちゃうかもしれないから
! お楽しみに~
! それじゃまたね!

END

【飛鳥・出雲・桜・倭国・瑞穂・北斗・大和・無限シャード】7月のイベント予定

平素はEMプログラムへのご理解とご協力ありがとうございます。
7月のイベント予定をお知らせします。

7月4日(土)
・22:00~ 飛鳥シャード / ミニイベント

7月5日(日)
・22:00~ 桜シャード / ミニイベント

7月12日(日)
・22:00~ 北斗シャード / ミニイベント LUDO2026 練習(他チーム参加歓迎)

7月18日(土)
・21:00~ 飛鳥・無限シャード / イベント (未定)

7月19日(日)
・21:00~ 出雲・桜シャード / イベント (未定)

7月20日(月)
・22:00~ 瑞穂シャード / ミニイベント(未定)

7月26日(日)
・21:00~ 大和シャード / イベント (未定) (仮日程)
・22:00~ 桜シャード評議会
・22:00~ 瑞穂シャード評議会

7月28日(火)
・21:30~ 瑞穂・倭国シャード / イベント (未定)

7月30日 (木)
・22:00~ 北斗シャード / イベント (未定) (仮日程)

※ミニイベントLUDO日本代表決定戦は8月8日(土)21時半、飛鳥シャードでの開催を予定しています。

クリスタルアークを手に入れろ!(イベント)

※6/29 イベント当日のセリフを掲載しました

 

王立広報室・広報官のリシオです。

今回は、ナーマちゃんからの依頼です。


以前、ベソス公爵家の騒動で捕らえた悪魔の件ですが……リック様が非を認め、謝罪したことで事態は無事に収拾いたしました。

 

 

それに伴い、証拠として石のポストに封印していた悪魔が『不要』となったのです。


そこで急遽提案されたのが、この悪魔を、占い師ハテナさんがいた『別の世界』へと送り出そうというプランです。


しかし、悪魔を安全に転送するためには『クリスタルアーク』と呼ばれる特別な入れ物が必要になります。


そのアークの在り処は魔女グリゼルダが知っているのですが、彼女の出す依頼(条件)を完了しなければ情報を教えてもらえない状況です。


というわけで、冒険者の皆様。まずは魔女グリゼルダの依頼をこなし、クリスタルアークの情報を引き出すためのお手伝いをお願いします。


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◆開催日時:6月26日(金)22:00~  
◆集合場所:Britain広場

※集合場所付近はリコールできないようになりますのでご注意ください。

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注意事項:
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
 - イベント進行の妨害、かく乱行為。
 - EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!

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プロローグ

 

 王立広報官室

 ここは、人ならざる者から貴族、神属まで、個性的かつ珍しい者たちが依頼に訪れる、ある意味で曰く付きの部署。


「室長。先日のサマンサ様とサリシア様の件ですが、リック様が非を認め、謝罪したことで無事に解決したそうです」

 

「悪魔はどうなったにゃ?」

「Lithic Jailに封印され、ナーマちゃんが保管しているようですね」

「それなら、一件落着にゃ」


 のんびりとあくびをしながら答えた室長のネコ・マタコは、喫茶シャンピニョンで仕入れた初夏の茶葉をカップに入れ、ぬるめの湯を注いだ。


 周囲に、若葉の爽快な香りが上品に漂う。


「う~ん、いい香りにゃ~」


「確かに爽快ですね。……それと、室長。この前から気になっているのですが、外の茂みに隠れている奴がいますよね」

 

「確かにいるにゃ」


 広報室の窓から見える外の茂み。

 その正体は、タウンクライヤーの記者である。


「今日も隠れていますよ」

「放っておくといいにゃ~」

「外に隠れ始めたのって、サマンサ様がここを訪れてからですよね」

「たぶんそうにゃ。あれはタウンクライヤーの記者、サラにゃ」

「タウンクライヤーの記者が、どうしてうちに?」


 ことの発端は、サマンサがこの広報室を訪れたことにある。

 彼女は貴族の不祥事や事件を密かに調査して解決する「裏の顔」を持つ伯爵家のご令嬢であり、裏社会では『王の番犬』とも囁かれている。


 彼女の行動を追えば、ネタにありつけるのは業界でも常識になっている。

 そんなサマンサの動きをずっと見張っていたサラが、次に目を付けたのがこの広報室だった。


 ここには人ならざる者が一定数出入りしており、時には明らかに上位の存在と思われる者まで現れる。


 さらに広報室に所属しているマーキュ・リにいたっては、クリドラを求めて他の並行世界に移動している——という、とんでもない噂まである。


 ここはサマンサ以上に、特大ネタの宝庫ではないかと記者は踏んだのだ。


 そのような都市伝説級の話が日常茶飯事で飛び交うのも、王立広報室の特徴であった。


「でも、放置しておくと依頼に来る方の迷惑になりませんか? 室長。しかもあの記者、隠れ方が絶望的に下手なんですよ」


 記者本人は、トラをモチーフとした衣装で茂みに潜み、万が一見つかっても「ガオー!」と叫べばトラと思われると本気で信じているらしい、ちょっぴり残念な思考の持ち主であった。


 そのため、茂みからは不自然なトラの耳やしっぽが丸見えになっており、怪しさ満点であった。


「大丈夫にゃ。いざとなったら、タウンクライヤー協会に直接圧力をかければ一発で解決にゃ」

「室長って、本当に何者なんですか……」


 恐ろしいことをサラッと言う室長が、涼しい顔でカップに口をつけようとした瞬間、広報室の入口が勢いよくバァンと開かれた。


「依頼があるなま~!」

 

 

「おや、ナーマちゃん。広報室へようこそのにゃ。詳しい内容を聞くから、二階の応接ブースへどうぞにゃ」

 

「なま~!」

 

◇◇◇


 ここは、森の賢者亭。

 多種多様な者たちが集う屋台である。


「コホン。皆様、お集まりくださりありがとうございます。本日はハテナ様を刺客からいかに護り、我々の世界の均衡を保つかについて議論するとともに、親交を深めたいと思います。そこで本日は、その『刺客』の方に直接来ていただきました。グリモン殿、どうぞ」


 本日の催しを企画した行商人のエックスが紹介すると、部屋の隅っこに座っていた男は、手元のグリモア(魔導書)をパタンと閉じ、おもむろに立ち上がった。


「もう顔見知りかとは思うが、改めて挨拶しておこう。グリモンである。忌まわしき枢機卿が送りこんだ刺客だ」


 グリモンはハテナを害するため送り込まれたはずなのだが、何故か本来の仕事を完全に放棄し、各地のアンクを巡って「お悩み相談会」を催している男だ。


 今では、彼の相談会のお陰で救われた者たちから、すっかり『神』扱いされているという変わり種である。


「この世界では『ハテナ』と言う名で活動されているのですね。邪と闇の神様」


 言って、グリモンは深く頭を垂れる。


「神様と呼ぶのはやめてくれぬかな?」


「御意。……して、何をお知りになりたいのかな、バランサー殿」

 
 グリモンはエックスに視線を向けた。

 行商人エックス。その正体はハテナが君臨した世界で光と闇の均衡を保つバランサーと呼ばれる重要人物である。


「貴殿が刺客の勤めを果たしていない理由と、今のあちらの現状を教えて欲しい」


 あちらとは、ハテナやエックス、そしてグリモンらが元々居た異界のことだ。

 


「ふむ」


 グリモンはテーブルの蒸溜酒を一杯口に含むと、途端に饒舌に語りはじめた。


 それは元の世界における枢機卿批判に始まり、あちらの世界が抱える問題点の列挙、そしてこちらの世界の素晴らしさについて——たっぷりと一時間近くに及んだ。


 熱を帯びた政治家の演説のようなその長話に、ハテナやレミエルは早々に飽き、完全に船を漕ぐ始末だった。


 唯一、真剣に相槌を打ちながら聞いていたのは、エックスだけであった。


「というわけで、この世界は文明レベルでこそ劣るが、人々の心情において、その自由度の高さは目を見張るものがある! 故に私はこの世界を愛し、悩みを抱える者たちの苦悩を取り除き、より自由に生きるための手助けをしていく所存です!」


 熱弁が締めくくられると、エックスは感動したように、ひときわ大きな拍手をグリモンに送った。


「素晴らしい! バランサーの視点から見ても、全くもってその通りだと思います。ハテナ様、新しくこの世界にやってきて鳴りを潜めている刺客のセドラですが、その者もグリモン殿のように改心する可能性は十分に考えられます!」


 そしてここからは、エックスが『バランサーの視点』として、グリモンに次ぐ長さの演説をはじめた。その長さは、きっちり三十分に及んだ。


「その通りなのだよ、バランサー殿!」


 すっかり意気投合したグリモンとエックスは、熱い涙を浮かべんばかりの固い握手を交わした。


 その暑苦しい演説が終わった絶好のタイミングで目覚めたハテナが、ふぁあ、と気の抜けたあくびをし終えてから口を開く。


「……やっと終わったのかしら。推測ばかりしていても仕方ないし、とりあえず、そのセドラ本人をここに召喚して直接聞いたらどうかしらね。レミエルはどう思う?」


「それが一番手っ取り早くて良いと思うね、邪神ちゃん」

 

 

「その呼び方はやめろと言ったよね。呪うぞ」

「じょ、冗談よ」


 ジロリと底冷えする視線で睨みつけるハテナに、レミエルは引きつった笑いを浮かべながら両手で降参のポーズをとった。


「師匠。私が居るのは場違いでは……?」


 異界の住人や上位種ばかりが集うカオスな空間に、ナーマが居心地悪そうに困惑の表情を浮かべると、ハテナが優しく彼女の肩に手を乗せた。


「大丈夫。これも勉強の一環よ。彼らの考え方をよく観察するといいわ」

「なま~」


 師匠の言葉に、ナーマはほっと安堵の息をつく。


「ハテナ様。それで、この場に奴をどうやって呼ぶおつもりで?」

「簡単よ」


 エックスの問いに短く答えたハテナは、指を高く掲げ、パチンと軽快な音を鳴らした。


 すると空間が唐突に歪み、見知らぬ下着姿のエルフがポツンと部屋の中央に現れた。


「え?」

「あ、すまない。着替え中だったか」


 完全に無防備な姿の刺客に対し、ハテナは思わず真顔で謝罪した。堅物のエックスとグリモンは「むっ」と唸り、慌てて紳士的に視線を逸らす。


「邪と闇の神……さま!?」


 数秒遅れて状況を理解し、我に返ったセドラが、短い詠唱とともに咄嗟にファイヤーボールを放った。


 至近距離から放たれた炎の球は、回避する暇もなくハテナの額にクリーンヒットし、彼女は糸が切れたようにバタリと後ろへ倒れ込んだ。


「師匠ぉぉっ!?」


 ナーマが半泣きになりながら、慌ててハテナに治癒魔法を施す。

 あまりの唐突な凶行に、他の面々も一様に驚愕の表情を倒れたハテナへと向けた。ただ一人、レミエルを除いて。


「……私は、神を屠ったのか?」


 セドラが自らの両手を見つめ、信じられないというような真剣な眼差しをハテナに向ける。いとも簡単に魔法が命中してしまったため、放った彼女自身が一番驚いているようであった。


「ハテナちゃん、お芝居が上手ね。まぁ、一回本当に死んだみたいだけど」

「……残念。レミエルは騙せないか」


 不満げな声の主は、額を撃ち抜かれて地面に倒れているはずのハテナであった。彼女は何事もなかったかのようにパッチリと目を開ける。


「師匠! 心臓に悪い冗談はやめて欲しいなま……!」

「悪かったわね」


 涙目のナーマに軽く謝りながら、ハテナはゆっくりと身を起こした。

 ハテナはゆっくりと起き上がると、涙目のナーマの頭を優しく撫でて謝罪した。


 そしてそのまま、未だ下着姿で呆然としているセドラへと視線を向けて話しかけた。


「レミエルの言った通りよ。あなたの一撃で、私の肉体は確かに一度死んだわ。だから、あなたの『神を屠る』という目的はこれで達成よ」


「いや、しかし……現にこうしてピンピン生きているではないか、邪の神さま!」

「この世界には『徳』というシステムがあってね、条件を満たせば自己蘇生できるの。便利よね」


「そ、それは知識としては知っているが……まだ深く理解できていない」

「そうね。とりあえず『献身の徳』を得ておくといいわ。他にも『再起の杖』と呼ばれる便利なアイテムもあるのよ。怪しげな闇の商店なんかで入手できるわ」


「悔しいが、その通りだ。私はまだ、この世界のルールをすべて把握できていない。それに闇の商店まで存在しているとは……」


 すっかり調子を狂わされ、ブツブツと呟くセドラに対し、ハテナはにっこりと微笑みかけた。


「そういうわけだから。あなたは私を一度倒した。それで解決、ということで良いと思うのだけど?」

「いや、それは……」


 セドラは明らかに困惑していた。

 確かに、使徒としての役割は一度果たした……と言えなくもない? しかし、標的であるハテナは目の前で堂々と蘇っている。


 このまま元の世界に「倒しました」と報告しても、あちらの状況に変化が見られなければ、結局は虚偽の報告をした反逆者扱いになってしまうだろう。


 だがその一方で、あちらの世界でふんぞり返っている『いけすかない枢機卿ども』に、一泡吹かせてやりたいという密かな反骨心があるのも事実だった。


(私は、どうするべきだ……?)


セドラが深刻な顔で葛藤の海に沈みかけた、その時。


「ねえねえ! それなら僕にいい考えがあるよ!」


 重い沈黙を無邪気に打ち破ったのは、どこからともなくふわりと現れた『リワードの妖精』であった。


「それだよ」


 妖精が小さな指を向けた先。そこには、つい先日サリシアが悪魔を封じ込めた『石のポスト』がぽつんと置かれていた。


  元々はリックが悪魔にたぶらかされていた証拠として使う予定だったが、彼があっさりと改心してしまったため不要になり、今後の処理に困ったナーマがハテナへ相談するために持ち込んでいたのだ。


 それを見たハテナは、何かを閃いたようにポンと手を打つ。


「なるほどね。このポストの中の悪魔に、私の力の一部を付与して『私の分身(ダミー)』に仕立て上げる。そして、それを刺客であるセドラに持ち帰らせれば、あちらの世界も騙せて万事解決というわけね」


「大正解! 流石ハテナだね。ただ一つ問題があって、それを移送するには石のポストじゃ耐えられない。もっと強固な入れ物が必要なんだ。『アーク』っていう特別な器なんだけど……」


 妖精曰く、そのアークとやらは魔女グリゼルダが所在を知っているそうだ。


「グリゼルダか……。彼女とは今ちょっと揉めてて気まずいのよね。というわけでナーマ、あなたがセドラと一緒に行ってアークを入手してきてちょうだい」


「なま!?」

「は?」


 突然の無茶振りに、ナーマとセドラの素っ頓狂な声が見事にハモった。


 ナーマは瞬時に顔を引きつらせ、師匠に向けて「お願いだからそれだけは勘弁して」と全身で悲痛な懇願のオーラを放つ。


「これも立派な勉強よ、ナーマ」


 しかし、ハテナは有無を言わさぬ笑顔で、愛弟子の肩にガシッと重い手を乗せた。逃げ場はどこにもない。


「ちょっと待ってくれ! 私は邪と闇の神さまを討ちに来た恐ろしい刺客だぞ!? そんな危険人物を、こんな下っ端……いや、お前の弟子と二人きりで野放しにしていいのか!?」


 セドラが至極真っ当なツッコミを入れる。


「ええ。だからこそ、弟子のナーマと一緒に行ってもらうのよ」


 ハテナは涼しい顔で、まったく答えになっていない持論を堂々と展開した。


◇◇◇


 翌日。

 グリゼルダの家の前に、ナーマとセドラの姿があった。


「こんにちはー! グリゼルダ様、ナーマです!」

 

 

 ややあって、廃屋の中から現れたのはグリゼルダであった。


「ナーマちゃんか。あのハテナから、例のものを預かってきたのかい?」

「い、いえ……。それはもう少し時間がかかるそうなま~」


 ナーマが冷や汗を流しながら答えると、グリゼルダはピクリと不機嫌そうに眉をひそめた。


「あのインチキ占い師……舐めた真似をしてくれるじゃないか。で、手ぶらで何の用で来たんだい? そっちの隣に突っ立ってる見慣れないのは誰だい?」


 鋭い視線を向けられ、ナーマは慌てて事情を説明し始めた。

 途中でセドラが生真面目な挨拶を挟みつつ、かくかくしかじかと『アーク』が必要な理由を語る。


 やがて、全てを聞き終えたグリゼルダは腕を組んで考え込んだ。


「なるほど。アークが必要なんだね」

「そうなま!」


 すんなりと渡してくれそうな気配はない。どうやら何か交換条件を考えているようだ。


「そうだねぇ。ハテナの代わりにお前さんたちに『代用品』を用意してもらおうかね」

「代用品? それは一体なんだろうか」


 セドラが怪訝そうな顔で尋ねると、グリゼルダは「あんたには説明が必要だね」とため息をつき、自身の事情について語り始めた。


 彼女は表向き、『行方不明になった弟子を探している』という名目で、家を訪れた冒険者たちに捜索依頼を出している。


 だが、その本性は自身の顔に刻まれる皺の一本たりとも許すことができない、執念の『美肌研究家』であった。


 実はハテナとは、その美肌の研究に必要なレア素材を提供する契約を結んでいたのだ。


 しかし、年々エスカレートするグリゼルダの無茶な要求にハテナが応えきれなくなり、現在絶賛揉め事(バックレ中)に発展しているのである。


「つまり、その美肌のための『スノーパウダー』という素材を入手できれば、我々にアークの情報を与えてくれるのだな?」


「そういうことさ」

「グリゼルダ様、そのパウダーはどこにあるのなま?」


 ナーマが身を乗り出して尋ねると、グリゼルダは懐から一つのルーン(転送石)を取り出して手渡した。


「このルーンの転送先で、『スノーツリー』と呼ばれる大木を探すんだ。周囲の景色に関わらず、その木だけが真っ白な雪に覆われているから、見ればすぐに分かるさ」

 

「分かりましたなま~!」

「分かった。任せておいてくれ」

「行く前に、いくつか注意点を伝えておくよ」


 グリゼルダは二人の顔を交互に見据え、真剣なトーンで告げた。


「木を探す時は、ルーンの到着ポイントを中心にして探すこと。それと、あの木は『夜になると移動する』厄介な性質がある。もし日が出ている間に見つけられなかった場合は、深追いせずに諦めて、翌日また仕切り直すんだよ」


 しっかりと頷く二人に、グリゼルダはふんと鼻を鳴らす。


「まったく。お前さんの師匠がさっさと契約を履行してくれれば、すぐに教えてやらんこともないんだがね。恨むなら、あのインチキ占い師を恨んでおくれ」


◇◇◇


 ナーマとセドラは、リコール魔法を使いルーンに記された場所へと降り立った。


 視界いっぱいに広がっていたのは、どこまでも続く鬱蒼とした深い森だった。


「ナーマ。効率を考えるなら、二手に分かれて探すか?」

「わかったなま。それじゃあ、三時間後にまたこの場所に集合なま~」

「了解した」


 二人は到着地点を中心にして、それぞれ左右に分かれて森の捜索を開始した。


 周囲の景色に関わらず、その木だけが真っ白な雪に覆われているというのだ。いくら森が広いとはいえ、すぐに見つかるだろう——そう高を括っていた。


 そして、三時間後。


「みつからないなま~」

「こちらも空振りだ。雪に覆われた大木など、遠くからでもすぐに目につくはずなのだが……」


 木が移動を始める「夜」が近づき、初日の探索はタイムアップとなった。


 翌日。


「今日もみつからないなま~」

 

 

「ああ、こちらも同じくだ」


 さらに翌日。


「だめなま~。占ったけど役にたたないなま~」

「予想以上に厳しいな。まさかこれほど手こずるとは……」


 結局。

 毎日夕暮れまで森の中を歩き回り、来る日も来る日も一週間通い詰めたが、目的の『スノーツリー』は影も形も見当たらなかった。


「もう限界なま~。足が棒なま~」


 ついに地面にへたり込んだナーマは、ブラッドワームの姿に戻ってしまった。完全に白旗モードである。


「自力で見つけるのは諦めて、広報室に行ってプロの冒険者に助けを求めるなま~」


「それが賢明な判断だな。……すまないが、私は日が暮れるまでもう少しだけこの辺りを探してみる。君は先に戻って、その手配を頼む」


 生真面目なセドラは諦めきれないのか、疲れを見せつつも再び森の奥へと視線を向けた。


◇◇◇


 ナーマが広報室を訪れたころ。


 外の茂みの中では、藪蚊と死闘を繰り広げていたタウンクライヤーの記者・サラが、新たな来訪者の存在に気づいていた。


「あれは確か……」


 サラはトラはメモ帳を取り出し、パラパラとページを捲る。


「あった。謎の占い師ハテナの弟子だぎゃ。あの子の正体はブラッドワームなんだわ。……ガオ〜ッ! って、蚊にやられて痒いだがや!」


 ボリボリと身体を掻きむしりながらも、記者の勘が「特大のネタ」の匂いを嗅ぎ取った。サラは痒みを我慢して茂み横の木へスルスルと登り、窓越しに広報室内のナーマの会話をメモし始める。


 窓越しで声は聞こえないが、問題はなかった。彼女は唇の動きから言葉を正確に読み解く、いわゆる『読唇術』のプロフェッショナルでもあったのだ。


「おお! これは読み通り、裏でサマンサも絡んでるだぎゃ。どえりゃあ良い記事が書けそうだで……おや?」


 ペンの走りが佳境に入ったその時、木の上にいるサラの周囲に、突如としてモクモクと白い煙が立ち込めた。


「最近は外に『デカい蚊』が多くて困るにゃ〜。広報室特製・麻痺系の強力除虫剤を焚いてみるにゃん」


 下を見下ろすと、室長のネコ・マタコが窓を開け、デカデカと『除虫剤』と印字された箱から勢いよく煙を噴き出させていた。


 明らかに上を狙って焚かれた煙は、盗聴中のサラをピンポイントで包み込む。


「ゴホッ、ゴホゴホッ! こ、この煙はなんだぎゃ!?」


 やがて吸い込んだ煙の効果で身体が軽く痺れ始め、サラは木の上で体勢を維持できなくなった。そのままバランスを崩し——ドサッ!


「痛たたたッ! ゴホゴホッ!」


 運良く下は茂みだったためダメージは軽微で済んだが、痛いものは痛い。サラは痺れる身体でのたうち回りながら、ひどく咳き込みつつ室長を睨み付けた。


「お、お前は……ネコ・マタコ!」

「おや? 木の上から随分と大きな蚊が落ちてきたにゃ!」

「誰が蚊だぎゃ! ゴホゴホッ。うちは立派な人間じゃい!」

「盗み聞きはよくないにゃ、タウンクライヤーのサラっち」

 

 

「人違いだぎゃ! ゴホゴホッ!」


 サラは完全にバレていることを必死で誤魔化すと、ふらつく足取りで急ぎその場から逃走した。


「ネコ・マタコめ……! いつかあいつの正体も暴いてやるがや! ゴホゴホッ!」


 捨て台詞と咳き込む声を残し、トラの着ぐるみは無様な後ろ姿で王都の路地へと消えていった。

 

※終了後、イベント当日のセリフを掲載しますので、全体のストーリーをお楽しみいただけます。

イベント当日のセリフ

 

・ブリテイン広場

(N ナーマ)
! なま~
! みなさん、お集まりくださいましてありがとうございます
! 今日みなさんにお願いしたいのは
! クリスタルアークという
! 悪魔を入れるための強固な器の入手となるなま~

! この悪魔は、リックベソス公爵に
! 取り入ろうとしていたアルベルト商会の頭目なま
! みなさんのお陰で、悪魔を捕えることができ
! その後、リックが罪を認めたので一連の騒動は無事に解決
! そして、使い道がなくなりポツンと残ったのが悪魔アルベルト マルファス

! そんなとき、行商人エックスさんの主催で
! 私の師匠でもある占い師ハテナを異界の刺客からいかに護るかを
! テーマに話し合いの場が設けられたなま

! そこで提案されたのが、悪魔に師匠の権能の一部を付与し
! 新たな邪と闇の神として、元の世界に送り込む案がでたの

! 師匠を討つべく、グリモンの次に派遣された
! 刺客の役割を持った使徒セドラ
! 彼女に悪魔を持ち帰らせ、現地で解き放つなま~

! あちらの世界は、正と光の神を信仰する光の教団が
! 大半の地域を支配しているなま
! しかし、その実態は利権と汚職に紛れたとんでもないものらしいの

! 光が全てを支配すると、世界のバランスが崩れ
! 均衡を保つために修正する力が働き
! 結果的に世界規模の混乱が起こると師匠は言ってるなま
! 教団はそれを力で抑えようともしている

! もちろん、それに反発する勢力も存在しているけど
! 師匠がこちらに退避している関係もあり
! かなり弱いみたいなま

! そこで、悪魔アルベルトを送れば、反対勢力の助けになり
! 混乱は生じるけど、最終的に世界のバランスも戻り始めると予想

! 師匠は、こちらの世界にいれば安全だし
! みんなハッピーでいられることを悪魔に伝えると
! 活躍できる場があるのならと快諾してくれたなま~


! 話を戻して

! 悪魔アルベルトを移送するクリスタルアークの所在は
! 魔女グリゼルダが知っているなま

! しかし、難易度の高い美白素材の納品が遅れているせいで
! ナーマたちが代わりの素材を用意することになったの

! それはイルシェナの森に生えているスノーツリーと呼ばれる
! 大木に実っている、スノーパウダーを集めることなま

! しかし、この大木は夜になると移動するから、ナーマたちでは発見できず・・・
! そこで、みなさんのお力を借りてスノーパウダーを手に入れて
! 魔女グリゼルダからアーク在りかを聞き出し、入手したいなま

! どうか、そのお手伝いをお願いするなま~
! ありがとうなま~

! 移動前にチャットに入るなま
! Yamato EM Eventね

, なま~

! ゲート出すから入ってね!
! 移動したら、スノーツリーを探すなま
! 木の周辺は強いモンスターも出るみたいだから注意ね
! 発見したら、チャットに報告をお願いします


・イルシェナの森

, Please find the snow-covered tree in the forest
, 移動したら、スノーツリーを探すなま
, 木の周辺は強いモンスターも出るみたいだから注意ね
, 発見したら、チャットに報告をお願いします


, 東にある小さな池の畔に大木があるよ
, 強いモンスターがいるから注意なま~
, Find the snow-covered tree 
, Tree is small pond east of the gate point

! みなさんのおかげで、スノーパウダーが入手できたなま~
! 次は魔女グリゼルダのところに行こう


・グリゼルダの家

(N)
! 揃ったかな?
! グリゼルダさん、こんにちは
! ナーマです

(G グリゼルダ)※姿を出して待機
! ナーマちゃん、こんにちは
! 冒険者のみんなも久しいわね
! ところで、スノーパウダーは手に入ったのかい?

(N)
! 入ったなま~
*ナーマはスノーパウダーを手渡した*

(G)
! これだよこれ
! あの木を探すのが面倒なので助かったよ
! これで、新しい美白パウダーが作れそうさね

(N)
! 良かったなま~
! ところでセドラさんは?
! 急遽、違う素材探しを依頼したのですよね

(G)
! まだ戻ってないね
! 素材集めに苦戦しているようだ
! でも、彼女の実力なら問題ないだろう

(N)
! でも、揃わないとアークの場所を教えてもらえないなま~

(G)
! うーん
! 時間の問題で揃うと思うから。特別に教えてやろう

(N)
! うれしいなま~

(G)
! このルーンを持って行きな
*グリゼルダはルーンを手渡した*
! 移動先に、アークを守っている大きな蜘蛛がいる
! 私の手下なんだけど、最近生意気でね
! 言うことを聞かないから懲らしめて来て欲しいんだ

(N)
! みんなでボコボコにして、アークを貰って来ればいいなま?

(G)
! その通りさ。奴はタフだから
! この人数でボコっても直ぐに復活する
! 気にせずやってしまうといい

(N)
! 分ったなま~
! グリゼルダさん、ありがとう
! それじゃみなさん、移動するなま~


・ダンジョン~ボス戦

(N)
, ダンジョンに入ったら、モンスターを倒しつつ
, 奥に進むといいみたいなま~

(N)
! みんな揃ったかな?
! しかし、大きな蜘蛛なま~

(A)※Arachne the Ark-Weaverは姿を出しておく
.tp 1(5195 2020 0)

! なんだ、小さきブラッドワームよ

(N)
! ナーマのことわかるなま?

(A)
! 我を侮ってもらっては困るな

(N)
! 私たちは、クリスタルアークを取りに来たなま~

(A)
! お前ら、ババァの手の者か

(N)
! グリゼルダさんに聞かれたら怒られるなま

(A)
! ここの会話が聞こえるわけないだろ

(N)
! クリスタルアークにはコミクリの機能もあるって
! グリゼルダさん言ってたよ

(A)
! なんだって!
! それはまずい、全部聞かれている・・・

(N)
! だから観念するなま~

(A)
! いや、ハッタリに決まっている
! それなら既に、ババ・・・否、グリゼルダ様がここに来ているはず
! 我をたぶらかすとは我慢ならぬ
! アークが欲しくば、力づくで取ってみるがよい

(N)
! 望むところなま~

(A)
! ただ、ここは狭い
! 少し広いところへ移動するとしよう
! 我も動きにくいからな

! 移動するなま~


※戦闘前

(N)
, みんな、ボコる準備は大丈夫なま?
, そろそろ来るよ

(A)
, 我を侮ったこと、後悔するがよい

※戦闘開始

(N)
, まだ戦っているお友達がいるから応援するなま~

※戦闘終了

(N)
, みなさんのおかげで、手下をボコることができたなま~
, ありがとう!
, ブリに戻るなま~

 

・ブリテイン広場

(N)
! みなさんのおかげでクリスタルアークが入手できたなま~
! ありがとうなま~
! これで、悪魔悪魔アルベルト マルファスを
! 師匠が元いた世界に送れます

! また進捗があれば、お知らせするなま~
! 今日は本当にありがとうございました
! それじゃさよなま~

END

サリシアとドラゴンの宝石 後編(5月イベント)

王立広報室・広報官のリシオです。

今回は、再びサリシア様からの依頼です。

 

元婚約者のリック様が、またまた悪魔につけ狙われているようで

その証拠を集めるためのアイテムを探すお手伝いをお願いしたいとのことです。

 

アイテムは二つ。

 

The Basin of Revelationtoiuという洗面器とThe Lithic Jailという石のポストです。

洗面器は対象者の真の姿を暴き、石のポストは悪魔の魂を封じる効果があるとのこと。


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◆開催日時:6月9日(火)22:00~  
◆集合場所:Britain広場

※集合場所付近はリコールできないようになりますのでご注意ください。

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注意事項:
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
 - イベント進行の妨害、かく乱行為。
 - EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!

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プロローグ


 ブリテイン王立広報室。


 王都でも有名な「忙しそうな雰囲気の演出に長けたプロフェッショナルが集う」部署である。

 


「室長。先月サクラコさんから依頼のあった、オークたちの闇鉱山の件ですが……ミノックの工夫たちの活躍により、無事に解決したようです」

 


 事の発端は、闇鉱山から流れ出た鉱毒だった。


 ブリテイン南部を流れる川が汚染され、川辺に植樹された桜をはじめとする植物や生物に被害が出た。


 周辺住民への健康被害はもちろん、ページリー伯爵家の長女サマンサの誕生祝賀会が延期に追い込まれるなど、貴族社会にも小さからぬ影を落としていた問題である。

 


「それは良かったにゃ。サマンサ様の誕生祝賀会も無事に開催されたし」


 だが、室長のネコマタコは他人事だった。愛用のカップを傾け、一口すすると「にゃ~」と気の抜けたあくびを漏らす。


「そうですね。それより室長。なんだか……ずいぶんと甘い香りのするお茶ですね」


「シャンピニョンの森の新茶にゃ」


「森の新茶?」

 


 この時期のユーの森には、様々な花が咲き乱れる。その瑞々しい新緑の葉と花々をブレンドしたものが、この時期だけの「森の新茶」だった。

 


「一口飲んでみるかにゃ?」


「いただきます」

 


 リシオは何気なくカップを受け取り、口に含んだ。


 その瞬間、軽やかな香りが鼻腔を突き抜け、脳裏に鮮やかな花畑のイメージが広がる。数ある香草の中でも、ひときわ主張が強いのはジャスミンだ。
 

 

「これは……ジャスミン茶に近いですが、他にもいくつか混ざっていますね」

 

「リシオも、少しは違いの分かる男になってきたにゃ。お姉さんは嬉しいにゃぁ~」

 

「お姉さんって……」

 

「コンコン」

 


 思わず顔をしかめるリシオと、どこまでもマイペースな室長。そんな二人の三文芝居が展開されている広報室に、控えめだが芯の通ったノックの音が響き、扉が開かれた。


 入ってきたのは、緑色のツインテールを揺らし、白いファンシードレスを纏った可憐な女性であった。

 


「広報室へようこそ」

 


 リシオがいつもの爽やかな笑顔で出迎える。

 

 

「ここであっていたのね。王立なのに何故城外にあるのかしら?しかも随分と庶民的な作りですわね」

 

「えっと……」

 


 開口一番、皮肉たっぷりの発言に困惑の表情を浮かべるリシオ。

 


「これは失礼、挨拶がまだでしたわ。ページリー伯爵家のサマンサと申します」 

 


 優雅にスカートをつまみ、礼をするサマンサ。

 


「ページリー伯爵家の方でしたか。私は広報官のリシオと申します」

 


 お辞儀をしたリシオは話を続ける。

 


「本日お越しいただいたのは、ご依頼でしょうか?」


「サマンサと呼んでちょうだいな。冒険者への依頼ではないのだけど。少々込み入ったお話がございますの」


「承知しました。こちらへどうぞ」

 


 リシオはサマンサを二階の応接ブースへ案内した。


◇◇◇


 二階にある広報室の応接ブース。


 使い込まれているが手入れの行き届いた椅子に腰かけたサマンサとリシオの前に、すぐさま湯気が立つカップが運ばれてきた。

 


「サマンサ様。室長のネコ・マタコと申しますにゃ。お口に合いますかどうか分かりませんが、新しく入った茶葉で淹れたお茶ですにゃ」

 


 トレイを捧げ持つ室長の姿を、サマンサはまじまじと見つめた。

 


「にゃ、とおっしゃいましたか?貴女、ひょっとして……」

 


 何かを言いかけたサマンサに対し、室長はすかさず口元に人差し指をかざし、悪戯っぽくウインクをして見せる。

 


「……いただきますわ」

 


 サマンサがそれ以上追及せずにカップを受け取ると、室長は満足そうに微笑んだ。カップから立ち上る白い湯気とともに、ジャスミンの甘く華やかな香りが狭い応接ブースを満たしていく。


 サマンサはそっとカップを傾け、琥珀色の液体を口に含んだ。

 


「まぁ……なんて美味しいのかしら」

 

「気分が落ち着くお茶ですにゃ。それでは、ごゆっくり。そうだリシオたん」

 

「はい、室長」

 


 階段を下りようとした室長が、ふと足を止めて振り返る。


 リシオに向けられたその瞳は、先ほどまでの気の抜けたものとは一変し、射すような鋭さを孕んでいた。めったに見せない、真剣な眼差しだ。

 


「サマンサ様の依頼は、きっちりと受けるように、にゃ」

 

「……はい」

 


 リシオのわずかに歯切れの悪い返事を見届けると、用件は済んだとばかりに、室長は再びいつもの軽やかな足取りで階下へと戻っていった。


 その背中を見送ったリシオは、改めて姿勢を正し、対面に座る令嬢へと視線を向ける。

 


「サマンサ様。それで、本日はどのようなお話でしょうか?」

 

「ええ。本来であれば、王家から直接そちらへ依頼があってもおかしくないほどの大事なのですけれど……」

 

「お、王家……?」

 


 思わずオウム返しに呟いたリシオの顔が、一瞬で強張る。


 王立広報室は「忙しいフリ」こそ得意だが、本物の国家機密や王命が転がり込んでくるような場所ではない。そんな部署に「王家が動くレベルの案件」が持ち込まれたのだ。


 室長がわざわざ真剣な目で釘を刺していった理由を、リシオは嫌というほど理解した。


 ごくり、と喉を鳴らすリシオの前で、サマンサが静かに唇を開く。


 彼女の口から語られ始めたのは、先ほどまでの穏やかな空気感を一瞬で吹き飛ばすような、ひどく深刻な内容だった。いわゆる、とある貴族が悪魔にたぶらかされている、という類の不穏な噂である。


 その貴族の名は、リック・ベソス公爵。


 リックは、先代当主が悪魔に乗っ取られて討伐された後、急遽その家督を継いだ若き当主だった。


 上級貴族とはいえ、当主とメイドの二名が悪魔と入れ替わっていたという前代未聞の醜聞は、瞬く間に社交界を駆け巡った。


 以来、ベソス家は腫れ物に触るかのように敬遠されるようになり、名声は地に落ち、財政状況も困窮の一途をたどっていたという。

 


「そんな、孤立無援のベソス家に近づいてきたのが……アルベルト商会ですの」

 


 サマンサは苦渋に満ちた表情で言葉を紡ぐ。


 その商会は、設立されて間もない新興勢力でありながら、次々と大口の契約を取り付け、急速に頭角を現している組織だった。


 しかし、その急成長の裏では、決して穏やかではない、怪しい噂が絶えず囁かれている。

 


「落ち目の公爵家と、謎多き新興商会、ですか……」

 


 リシオは、手元で冷め始めているジャスミン茶を見つめながら、これから巻き込まれるであろう面倒な事態の予感に、小さく息を吐き出した。

 


「これは、あくまでわたくしの推測なのですけれど……ベソス家は、再び悪魔に目をつけられているのではないかと思うのですわ」 


「なるほど。サマンサ様は、何か具体的な証拠を見つけられたのですか?」


「そこなのよ。どうしても尻尾が掴めないのですわ」

 


 サマンサは悔しげに眉をひそめた。彼女はアルベルト商会の実態を探るため、幾度となく優秀な調査員を派遣してきたという。


 しかし有益な情報は一切得られず、それどころか、中には行方不明となり完全に音信不通となった者までいるらしい。


 ページリー伯爵家は、代々貴族の不祥事をいち早く暴き出し、公になる前に穏便に処理する「裏の顔」を持っている。その彼らが手こずる相手なのだ。事態の根深さにリシオは背筋が寒くなった。

 


「そのような大切なことを僕なんかに話してもいいのですか?……あの、そのような家の機密に関わる大切なお話を、僕なんかにしてしまってもよろしいのですか?」


「ええ。ここの室長さんが『あの方』だと分かったので、何の問題もありませんわ」

 

「室長が……?」

 


 リシオは得心のいかない顔で、ネコ・マタコが消えていった階下へと視線を向けた。あの、お茶を淹れてあくびをし、頭に猫耳カチューシャをつけた女性に、一体どんな秘密があるというのだろうか。

 


「そちらはお気になさらず。それよりも——」

 


 サマンサは居住まいを正し、本題を切り出した。そこで彼女が目をつけたのが、ザッカ―ハーグ子爵家のサリシアであった。


 彼女はリックの元婚約者で、家で起きた悪魔憑き事件を、実質的に解決へと導いた張本人。


 身分の差など歯に衣着せぬ気風で、冒険者と共にダンジョンへ乗り込むなど、通常の貴族令嬢ではあり得ない破天荒な行動力の持ち主でもある。

 


「サリシア様なら、今回も何か解決の糸口を見つけると思うのです。ただ、わたくしの立場から直接動くわけにはまいりません。ですから、代わりに広報室にお手伝いをお願いしたいと思っておりますの」


「我々に、ですか?」

 

「ええ。おそらくサリシア様は依頼をしに、こちらへ足を運ばれるはずですわ」

 


 つまり、サリシアが広報室に接触してきた際、彼女が掴んだ情報や動向を、サマンサへと横流ししてほしいという文字通りの「裏仕事」の依頼だった。

 

  
「なるほど……。事情は察しました。お引き受けいたします」 

 

「頼りにしていますわ。先日のわたくしの誕生祝賀会でも、予想通りリック様とサリシア様は火花を散らしていたわ。もちろん、わたくしもリック様の肩を持って、あえて悪役っぽく振る舞って差し上げましたの!」

 


 ふふん、と胸を張ってドヤ顔を決めるサマンサに対し、リシオは引きつった笑みを返すしかなかった。この令嬢も令嬢で、なかなかに癖が強い。

 


「サリシア様の動向は常に偵察させておりますが、そろそろこちらへ足を運ぶ頃合いかと思います。先ほどの件、くれぐれもよろしくお願いいたしますわね」

 


 すべての用件を伝え終えたサマンサは、優雅な足取りで広報室を後にした。


◇◇◇


 翌日。

 サマンサの予想は恐ろしいほど正確に的中し、サリシアが広報室の扉を叩いた。

 


「ザッカ―ハーグ子爵家のサリシアですわ! 再び依頼があって参りましたの!」

 

 

 リシオが手慣れた様子で応接ブースへ案内すると、サリシアは席に着くや否や身を乗り出し、怒濤の勢いで先日の祝賀会の話から切り出した。

 

 祝賀会当日。

 


「ザッカーバーグ家のサリシアですわ。本日はお招きくださいまして、感謝しますわ」

 


 受付で招待状を提示したサリシアは、家令の厳かな先導で会場へと向かった。
ブリタニアの貴族は、日々の生活を営む私邸こそあれど、大規模な祝賀会を催せるほどの私有施設は持っていない。


 そのため、こうした華やかな催しを行う際は、王宮の壮麗な施設を借り受けるのが古くからの恒例となっていた。


 煌びやかな会場の扉が開く。入るや否や、家令が声高らかにその名を響かせた。

 


「ザッカーハーグ子爵家、サリシア様ご到着でございます!」

 


 その瞬間、すでに会場を埋め尽くしていた参列者たちの冷ややかな視線が一斉に、そして容赦なくサリシアへと集中した。

 


(あら……? なぜ皆様、こんなに早くから勢揃いしていらっしゃるのかしら。ひょっとして——)

 


 突き刺さる視線の不自然さに、サリシアの脳裏にある心当たりが浮かび上がる。


 その答え合わせの瞬間は、すぐに訪れた。周囲から隠す気もない、悪意に満ちたひそひそ話が漏れ聞こえてきたからだ。

 


「まぁ、ずいぶんと遅れておきながら、よくもあんなに堂々としていられますわね」

 

「これだから下級貴族は苦手なのです。時間の守り方もご存知ないのかしら」

 


 なるほど、とサリシアは内心で小さくため息を吐いた。


 どうやら彼女に届けられた招待状には、あらかじめ本来とは異なる「遅い時刻」が記載されていたらしい。実につまらなく、そして姑息な嫌がらせだった。


 だが、その不快な沈黙を破るように、聞き覚えのある高飛車な声と、見知った顔がサリシアの前に現れた。

 


「あら、サリシア様ではございませんこと?」

 

「久しいな、サリシア。よくも平然と顔を出せたものだ」

 

 

 声の主は、この祝賀会の主役であるページリー伯爵家の長女サマンサ。そして、その後ろに控えるのは、サリシアの元婚約者であるリック・ベソス公爵であった。
 

 サマンサは冷徹な品定めの視線を隠そうともせず、対するリックにいたっては、隠しきれない敵意をその表情に丸出しにしていた。

 


「これはサマンサ様に、元婚約者様ではございませぬか。ご機嫌麗しゅうございますわ」

 

「子爵風情が調子に乗るんじゃない!」

 


 少し意地悪に、嫌みっぽく突っついてみれば、案の定すぐに乗ってきた。

 


(以前よりも随分と導火線が短くなってませんこと?)

 


 サリシアは内心でそっと呟く。


 いくら落ち目とはいえ、これでも公爵家を継いでいる身だ。周囲の冷遇が彼をここまで余裕のない男に変えてしまったのだろうか。

 


「わたくしが、あの時悪魔の正体に気付いて差し上げなければ、今頃どうなっていたことやら。少しは感謝していただきたいところですわ」

 


 あえて高飛車な悪役令嬢のように振る舞うサリシアに対し、リックはみるみるうちに顔を真っ赤に染めていく。激昂する彼を宥めるように、今度はサマンサが冷ややかに口を開いた。

 


「サリシア様がどのような素晴らしい品をお持ちになるか、皆様も大変興味がありましてよ?」


「ふん、まあいい。過去の自慢話はそのくらいにしてもらおうか。それで、サマンサ嬢への贈り物は持参したのか?」

 


 サマンサがわざとらしく周囲の参列者たちに視線を向けると、そこかしこからクスクスと下卑た笑い声が漏れ聞こえてきた。


 なるほど、遅刻の件といい、この場でサリシアに恥をかかせて嘲笑うことこそが、彼らの用意したメインディッシュというわけだ。


 しかし、そんな周囲の悪意などどこ吹く風で、サリシアは不敵な笑みを浮かべた。

 


「もちろん、お持ちしておりますわよ」

 


 サリシアは、お祝いの品が置かれている豪奢なテーブルへと歩みを進める。


 そこには、目も眩むような煌びやかな品々がうず高く積まれていた。それもそのはず、ここに招待されているのは王都でも屈指の資産を持つ貴族たちばかり。


 サリシアの生家のような没落しかけの家が呼ばれること自体が稀なのだ。


 これは「体のいい公開処刑(いじめ)」である。だが、それを重々承知の上で参加し、上流貴族との繋がりを掴んで這い上がろうとする家は少なくない。


 貴族社会とは本当にいびつで、時として不要な存在のようにも思える。


 しかし、有事の際には私兵を供出しなければならず、重い義務と責任が課せられている以上、国家にとって不可欠な存在でもあった。


 そんな虚飾に満ちた会場のど真ん中で。


 ドレス姿には似つかわしくない無骨なバックパックから、サリシアが「お祝いの品」を取り出すと、周囲の貴族たちから一斉にざわめきが起こった。

 


「……それは何かしら」

 


 サマンサが興味深げな視線を向けつつ、そのアイテムへと近寄る。

 


「こちらは『ドラゴンエッグの宝石』と呼ばれる、とても貴重なものですわ」

 

 サリシアの言葉に、すかさずリックが嘲笑を被せた。

 


「サリシアよ、それのどこが貴重なのだ。卑しい貴様のことだ、適当にそれっぽいガラクタを見繕ってきたのだろう。どうせ安っぽいガラス細工に決まっている!」

 


 リックはサリシアの手から強引にそれを奪い取ると、わざとらしく手放し、大理石の床へと叩き落とした。

 


「おっと、これはすまない。手が滑ってしまった」

 


 ガチャン、と硬質な音が会場に響き渡る。誰もが「安物のガラス細工」が無惨に砕け散る様を想像し、息を呑んだ。

 


「ほら見てみろ、無惨に砕け……おや?」

 


 勝ち誇ったように足元を見下ろしたリックの顔から、スッと表情が抜け落ちた。


 大理石に叩きつけられ、あれほどの派手な音を立てたというのに、床に転がる『ドラゴンエッグの宝石』には傷一つついていない。


 それどころか、会場のシャンデリアの光を吸い込み、悠然と神秘的な輝きを放っていた。

 


「リック様、酷いことをなさいますわね。サマンサ様への大切なお祝いの品をわざと落とすだなんて……。それに、これは安物のガラス細工などではなく、正真正銘の本物の宝石でございますわ」

 


「お、俺は絶対に信じないからな! 没落しかけの貧乏貴族が、そんな高価な宝石を用意できるはずがない!」

 


「お言葉を返すようですが、我が家が没落の危機に瀕しているのは、全てリック様が裏で手を回した画策によるものではございませんこと?」

 


「ほう、ならばその証拠を見せてみろ!」

 

「まぁまぁ、お二方とも熱くならないで。ここはわたくしのために用意された祝賀会場ですのよ?」

 


 ふふっ、と楽しそうに笑みを浮かべ、サマンサが二人の間に割って入る。


 その目には、退屈な祝賀会で極上の「新たな余興」を見つけた歓喜の色が浮かんでいた。

 


「サリシア様。リック様がザッカ―ハーグ家に良からぬことを差し向けたというお話……大変興味深いですわ。後日でも結構ですので、わたくしにもその証拠を見せてはくださいませんこと?」


(しまったわ……)

 


 これまでに受けた数々の陰湿な嫌がらせを思い出し、つい感情的になって口を滑らせてしまった。サリシアは一瞬後悔したものの、すぐに持ち前の胆力で思考を切り替える。

 


(でも、よく考えたらこれは数々の汚名を晴らす絶好のチャンスなのではないかしら。伯爵家のご令嬢が直々に証人になってくださるなら、この機会を逃す手はありませんわ!)

 


「承知いたしました、サマンサ様。私、サリシア・ザッカ―ハーグが、必ずやリック様の悪事の証拠をお見せいたしますわ」

 


「言ったな、サリシア! もし証拠が見つからなかった時は、公爵家を侮辱した大罪で、貴様を断頭台へ送ってやる!」

 

 

「……何かにつけてすぐに断頭台とおっしゃいますけれど、そもそも今の貴方に、他家の人間を処刑できるような権利はないと思いますわ」

 


 サリシアが冷ややかに言い放つ。


 元婚約者に向かって放つには、あまりにも短絡的で品性下劣な暴言だ。周囲を取り囲む他の貴族たちからも、呆れを含んだ冷ややかな視線がリックへと突き刺さっていた。


 サマンサは社交界を牛耳るページリー伯爵家の長女であり、リックのベソス公爵家とは以前から懇意の仲だと聞いたことがある。


 もちろん、それはリックの家が悪魔騒動で「落ち目」になる前の話だ。


 今でもおそらく、リックは何らかの形で伯爵家からの支援を受けてどうにか体面を保っているのだろう。


 だが、今のサマンサの態度を見る限り、彼を庇護する気など毛頭なく、ただ純粋にこの修羅場を楽しんでいるだけのように見えた。

 


「お二方とも、今日はわたくしの生誕を祝う場ですわ。これ以上の諍いは見過ごせません。……この件については、一週間後までに、サリシア様が証拠を揃えること。もし提示できない場合は、相応のペナルティーを受けていただきます」

 


「サマンサ様、それで結構ですわ」

 


「サリシア様。もし証拠を出せず、わたくしの家からも王室へ上奏が出た場合は、先ほどリック様が言っておられたように、本当に『断頭台』もあり得ますのであしからず」

 


「心得ておりますわ」

 


 名誉を重んじる貴族社会の仕組みは独特だ。自身より格上の二つの家から王室に上奏(糾弾の訴え)があれば、問題ありとされた家に対し、有無を言わさず重い処罰を加えることが可能になっている。


 公爵や伯爵といった上級貴族たちは、自分たちの権益を守るために結託している場合が少なくない。彼らの機嫌を損ね、酷く嫌われてしまえば、今のサリシアのように容易く窮地に立たされてしまうのだ。

 


「おいサリシア。僕は心優しい男だ。今ここで頭を大理石に擦り付けて命乞いをするというなら、今回だけは許してやらんでもないぞ?」

 


 絶対的な優位に立ったと信じて疑わないリックが、勝ち誇った下劣な笑みを浮かべてサリシアを見下ろした。

 


「お気遣いありがとうございます。しかしながら、お断りいたしますわ。証拠は必ず見つかると思っておりますの」


「あらサリシア様。リック様の温情を無下になさるおつもりで?」

 


 サマンサが扇子の向こうで目を細める。

 


(これのどこが温情だというのかしら……!)

 


 あまりの理不尽さに、激しい怒りが胸の奥底から込み上げる。


 思わず大声で叫び出しそうになるのを、サリシアは貴族としての矜持でグッと呑み込んだ。ここで感情的になれば、それこそ彼らの思う壺だ。


 彼女は背筋をピンと伸ばし、不敵な笑みを崩さずに言い放つ。

 


「一週間後。必ずや、皆様が驚くような証拠を見つけてご覧に入れますわ」

 


 凛とした声で宣言したサリシアは、唖然とするリックたちを冷ややかに一瞥すると、美しくドレスの裾を翻し、一切の迷いがない堂々とした足取りで祝賀会場を後にした。

 


「……と、勢いよく言ってしまったけれど、どうしましょうかしら」

 


 会場の重厚な扉が閉まった途端、サリシアの完璧な令嬢の仮面があっさりと崩れ落ちる。


 乗り合いラマの停留所までとぼとぼと歩きながら頭を抱えていた彼女は、ふと路地裏の壁に視線を向け、そこに貼られた不気味なポスターに釘付けになった。

 


「この既視感(デジャヴ)……じゃないわ、ナーマさん!」

 


怪しげなオーラを放つ『占い師ナーマ』のポスターを見た瞬間、サリシアの脳裏にひとつの光明が差した。彼女は弾かれたように顔を上げ、久しぶりに甘味処『グッドイーツ』へと足を向ける。

 


「あのお店に行くのは、あのドラゴンエッグの宝石の一件以来かしら」

 


 グッドイーツに到着すると、店先には今日も名物のスイーツを目当てにした客たちの長蛇の列ができていた。


 しかし、サリシアはその列を華麗にスルーして、迷いなく店内へと足を踏み入れた。

 


「ごめんくださいまし」

 

「ちょっとお客さん、順番に並んで……って、サリシアさん!」

 


 注意しようとしたサキが、顔を見てすぐに驚きの声に変わる。

 


「お久しぶりですわ。今日はスイーツではなく、占いをしに参りましたの」

 


 サリシアは挨拶もそこそこに、店内の隅っこ——いつもの薄暗い定位置に座る奇妙な影へと視線を向けた。

 


「なま~」

 

「ナーマさん! またわたくしを占って欲しいのですわ!」

 

「なま~」

 


 緊迫感など微塵も感じさせない、気の抜けるようなゆるい返事。


 ナーマは怪しげな装束の奥からちらりとサリシアを一瞥しただけで、すぐに手元の水晶玉を布でキュッキュと磨く作業に戻ってしまった。

 


「わたくし、リック様の悪事の証拠を見つけたいですの!」

 

「……1回1000gpなま。お財布、大丈夫なま?」

 

「もちろん、問題ありませんわ!」

 


 サリシアが迷いなく金貨を提示すると、ナーマは現金なほど素早く水晶玉に手をかざし、微かな声で呪文を唱え始めた。

 


「いまの流れを確認するなま~」

 


 水晶の中に、ぼんやりとした輪郭が浮かび上がる。


 それは雲上の世界をゆったりと漂う、一筋の光の玉だった。あまりにものんびりとした、静かで、どこまでも平和な動き。

 


「また、なま……っ?!」

 


 ナーマの顔がピクリと引きつった。

 これはどう見ても「またまたあの世」の光景だ。


 つまり、今度こそ本当にサリシアの命が尽きるということ?

 


(そんな残酷なこと、いくらなんでも口が裂けても伝えられないなま……。けど、占い師としては伝えなきゃ……!)


「あなた、死ぬなま!!」

 

 

 1秒の葛藤の末、思いっきりストレートに口走ってしまった。ナーマは内心で猛反省する。いや、まだだ。まだタロットがある。


 ナーマは冷や汗を流しながら、震える手でカードを一枚引いた。
勢いよくめくって現れたのは——無情にも禍々しいオーラを放つ『正位置の死神』アゲイン。

 


(……あ、これ、やっぱり完全にアカンやつなま)

 


 だが、絶望する占い師をよそに、当のサリシアはぐっと身を乗り出した。

 


「人間、いつかは必ず死を迎えるものですわ。もし死んでしまっても、それは今世の課題を終えて寿命を迎えたというだけのこと。また来世を楽しむだけですわ!」


「な、なまぁ……(なんて前向きな!)」

 


 死の宣告すら力技で跳ね返す、超ポジティブな解釈を繰り出すサリシア。


 その屈託のない笑顔に、ナーマは自身の師であるハテナの教えを再び思い出していた。

 


『占いは人を勇気づけるもの。落胆させてはダメ』

 


 そうだ、落ち込んでいる場合ではない。ナーマは必死に言葉を絞り出す。

 


「そ、その通りなま~! 毎日を楽しく生きたもの勝ちなま!」

 

「ええ、その通りですわ!」

 


 パチンッ! と勢いよくハイタッチを交わし、謎の盛り上がりを見せる二人。


 水晶の予兆(あの世の光景)は前代未聞だが、タロットについては、解釈次第でピンチを跳ね除けたケースは意外とある。


 結局のところ、ネガティブな感情に支配されなければ、運命はどうにでも書き換えられるのだ。
それこそが、師から授かった世界の真理である。

 


「気を取り直して、サリシアにぴったりのラッキーアイテムを占うなま」

 


 仕切り直しにナーマが水晶玉を撫でると、そこに『啓示の洗面器と石の牢獄』という不可思議な文字が走り、澄んだ水を張ったシンプルな洗面器と、石でできた重厚なポストの映像がふわりと映し出された。

 


「まぁ、とても綺麗なアイテムですわね」

 

「綺麗なアイテム!?」

 


 その言葉に誰よりも早く反応したのは、近くでスイーツを並べていた看板娘のサキだった。彼女は「綺麗」という響きに強烈に惹かれ、カウンターからものすごい勢いで身を乗り出してくる。

 


「本当なの! これ、サキもすっごく欲しいの!」

 

「なま~。でもこれ、どうやらダンジョンの最深部にあるみたいだね」

 


 ダンジョンの最深部。その物騒な言葉を聞いた瞬間、サキの目がスッと鋭く光った。


 彼女は真剣な眼差しで水晶の中の景色を凝視し、やがて確信を得たように弾んだ声で高らかに告げた。

 

 

「場所が分かったの!3人で行くの」


「なま~?」


「わたくしもですの?」


「サキも行ったことあるから大丈夫なの!」

 

「でも、少し待ってくださいまし。今のわたくしたちの目的は、あくまでリック様の悪事の証拠を見つけることですのよ?」

 


 サリシアが至極真っ当なツッコミを入れると、ナーマは少し考えてから、ポンッと手を叩いた。

 


「なら、降霊術を試すなま~」

 


 それは最近、師匠のハテナから教わったばかりの術らしい。高次元の霊を呼び出して、直接ヒントを聞き出すという大技だ。

 


「追加で1000gpなま~」

 

「ぜんぜん大丈夫ですの」

 

「まいどなま~」

 


 ナーマが小声で怪しげな言霊を呟き始めると、不意にグッドイーツの店内の空気がひんやりと冷たくなってきた。

 


「なんだか寒くなってきたの!」

 

「ちょっと、あの占い師さん大丈夫なの……?」

 


 買い物中の客たちが、占いブースを訝しげに遠巻きに見つめる。

 


「大丈夫なの、お客様。いつものことなの!」

 


 サキが元気よくフォローを入れる中、やがて店内のランタンがチカチカと点滅を始め、ナーマがゆっくりと口を開いた。
 

 

『だれや、我を呼んだのは』

 


 ナーマの口から、突如として重低音のオッサンの声が響き渡った。

 


「サリシアと申しますわ。あなたはどなたですの?」

 

『我は冥府の王、サタンや』

 


 明らかにヤバすぎる存在と繋がってしまった。店内の客たちから「ヒッ」と短い悲鳴が上がり、一気に動揺が広がる。

 


「なんだか、すごい危険なのと繋がったの!」

 

「素敵ですわ! リック様の悪事の証拠を掴みたいのですけれど、何かご存知ありませんこと?」

 


 恐れおののく客たちとは対照的に、サキとサリシアは目をキラキラと輝かせて身を乗り出した。

 


『タダでとはいかんわな。相応の対価を寄越せば教えたる』

 

「面白そうだから、サキが支払うの!」

 


 言って、サキは自身のバックパックから先月入手したレアなリワードを取り出し、ナーマの前に無造作に差し出した。すると、リワードは眩い光に包まれ、ふっと跡形もなく虚空へ消え去った。

 


「おおーっ!」

 


 店内から割れんばかりの拍手が起こる。どうやら客たちは、手の込んだ新作の手品ショーだと思い込んだようだ。

 


『ええもん、おおきにな。リックの件やな。それなら、「アルベルト商会」を探すとええ。そこに、さっきの洗面器とポストを持っていくんや。そうすれば、奴らの正体をみることができるはずや』

 

「まぁ、洗面器とポストを!」

 

『そういうこっちゃ。ほな、ばいなら』

 


 軽い挨拶を残して気配が消えると、ナーマがハッと目蓋を開いた。その表情は引きつり、冷や汗をかいている。

 


「ヤバいのが降りてきたなま~。焦ったなま……」

 


 まさか冥府の王が直接出てくるとは思っていなかった。


 言霊も師匠から教わった通りだったが、一歩間違えれば大惨事である。改めて自分の術の危険性を実感し、ナーマはブルブルと身震いした。

 


「なるほど……アルベルト商会が絡んでおりますのね」

 

「それじゃあ、また三人でアイテムを取りに行くの!」

 

「なま!? ナーマも行くの?」

 

「当然ですわ!」

 

 

 パン屋、お嬢様、占い師。


 この三人は前回もパーティーを組んでダンジョンに挑んだ仲だ。ある程度の連携は取れているし、何より謎の信頼感があった。

 


「でも、今回は二手に分かれた方がいいの!」

 


 サキの提案により、素早く作戦が練られる。


 サリシアは冒険者と一緒に『洗面器』を入手し、サキとナーマの二人で『石のポスト』を入手する。そしてその後、怪しい商会で合流し、一気にその正体を暴くという計画だ。

 


「サキは下準備するから数日かかるの!」

 

「分かりましたわ。では、わたくしはサキさんの準備が整い次第、冒険者の手配も兼ねて……あの『広報室』へ向かいますわ」

 


 数日後、サキからの連絡を受け、サリシアは広報室へ足を運んだ。

 

 

※終了後、イベント当日のセリフを掲載しますので、全体のストーリーをお楽しみいただけます。

イベント当日のストーリー

 

●ブリテイン広場

(サリシア)
! 皆様、ようこそお集まりくださいました。サリシアはですわ
! 3月に依頼したとき以来ですわね
! あの時はありがとうございました
! 今日お願いしたいのは、The Basin of Revelationtoiuという洗面器探しです

! 成り行きをお話ししますわね
! 皆様と一緒に手に入れたドラゴンエッグの宝石ですが
! 無事にサマンサ様の誕生祝賀会に持参しましたの


! 予想通り、元婚約者のリック様もいらっしゃいました
! 宝石は無事に渡せたのですが

! 「お前に宝石なんて用意できるわけない」
! 「どうせガラス玉だろ」と言われ難癖をつけられたリ
! 誕生祝賀会の主賓であるサマンサ様にも嫌味を言われたり
! 散々貴重な体験をしてきましたの
! その後、リック様にいろいろと言われた結果

! 彼が悪行をやっているという証拠を提示しなければ
! 断頭台送りにしてやると言われてしまったのです
! この手のお話に出て来る王道の展開ですわ

! ピンチになったわたくしは
! 再びナーマさんに占ってもらいましたの

! 占いの水晶に出てきたのは、洗面器と石のポスト
! 洗面器は真実の姿を暴く効果があり
! 石のポストは、The Lithic Jailといって
! 悪魔の類が現れた時、魂を封じる効果があるものですわ

! さらにヒントを得るために、ナーマさんが新しく覚えた
! 交霊術を使ったら、自称冥府の王サターンが出てきたのですわ

! 店内が急に寒くなったり
! わたくし、とても心が踊りましたわ
! サターン曰く
! 「エエもん、おおきにな。リックの件やな」
! 「それならアルベルト商会を探すとええ」
! 「洗面器と石のポストを持っていくんや」
! 「そうすれば、奴らも正体を現すやろ」
! と言ってました

! 悪魔も冥府の王も似たような地方に住んでいそうなので
! なんとなくわかるのでしょうね
! 今回は二手に分かれて行動しています
! パン屋とナーマさんには石のポストを入手してもらい
! アルベルト商会の秘密の倉庫近くで合流しますの

! その後、倉庫に皆様と一緒に乗り込んで、奴らの正体を暴く算段ですわ
! それでは、洗面器を入手するために移動するとしましょう

! 移動前にチャットへお入りくださいませ

! Yamato EM Eventですわ
, 本日は宜しくお願いしますわ
! それではゲートをお出しするのでお入りくださいまし


●ダンジョン

(サリシア)
! 洗面器は、このダンジョンの奥深くにいる
! モンスターが持っているそうですわ
! 気をつけて進むとしましょう

※中ボス討伐

(サリシア)
! 皆様のおかげで洗面器を入手できました
! ありがとうございます
! これから移動先でパン屋とナーマさんに合流します
! ゲートをお出しするのでお入りくださいまし


●合流ポイント

(サリシア)
! あら、ナーマさん
! パン屋はどうしたのです?

(ナーマ)
! サリシアちゃん、サキちゃんは負傷したなま~

(サリシア)
! え!あのパン屋が負傷なんてしますの?

(ナーマ)
! そうなま~
! 油断したなま
! 先に町に戻って、治療をするなま
! それとこれ、渡しておくね

(サリシア)
*サリシアは、石のポストを受け取った*

(ナーマ)
! あとは手はず通り、この奥にある商会の秘密倉庫を目指すなま~

(サリシア)
! ガッテン承知ですわ
! みなさま、パン屋の犠牲を無駄にしないためにも、必ず証拠を押さえますわよ


●秘密倉庫


(サリシア)
! うーん、どこからみても悪魔ですわね

(アルベルトMalphas)
! 手下から事前に情報を得ているからな
! 洗面器を使って俺の正体を暴き、魂の牢獄に捕らえるつもりだろ?

(サリシア)
! どうして分かるのです?あなたサイキッカーですの?

(アルベルト)
! そんなわけないだろ
! うちの商会の情報網を舐めてもらったら困るな
! そこの冒険者の中に、俺の手下がいるんだよ
! ナマコの姿をした奴がそうだ

(サリシア)
! え、そうだったのです?前回もいらしたような?

(アルベルト)
! そうだよ。宝石のことも知ってるぜ
! だから、こざかしい芝居をやるよりも
! 先に姿を出しておいたほうが話が早いだろ

(サリシア)
! そんな大切なことまで、話して大丈夫ですの?

(アルベルト)
! どうせお前ら、ここから生きて帰れないからな
! 冥土の土産みたいなもんさ

(サリシア)
! まあ、恐ろしいですわね。リック様に近付いたのもあなた方ですの?

(アルベルト)
! そうだよ。二年前に潜り込んだのも、俺らの仲間さ
! あのリックという奴は劣等感の塊でな

(サリシア)
! やはり、そうでしたか。わたくしもリック様に対しては同意見ですわ

(アルベルト)
! だろ。俺たち悪魔はな、あのネガティブな感情が大好きなんだよ
! あいつは、子供の頃から自分の不出来を他人のせいにして育ってるんだ

(サリシア)
! プライドが高く、自分の非を認めないることが出来ない方ですの

(アルベルト)
! その通り。お前、話が合うな!

(サリシア)
! そうてすわね。意外ですわ

(アルベルト)
! どうだ、俺たちの仲間にならないか?

(サリシア)
! とても魅力的なお誘いですわね
! でも、冒険者の皆さんの方が強いですし
! ナーマさんやバン屋と一緒に行動する方が面白いですもの

(アルベルト)
! そうか、残念だな
! あとで、仲間にしたくれと言ってもダメだからな

(サリシア)
! お気遣いありがとうございます

(アルベルト)
! 交渉決裂
! さて、ここは狭いから、広いところに移動してから始末してやる
! 俺たちの計画の邪魔だからな

(サリシア)
! 望むところですわ
! 移動しますわよ

※ボスモンスと対戦

(サリシア)
, 討伐完了ですわ
, それではブリへ戻りますわよ!


●ブリテイン広場

(サリシア)
! みなさん、本日はありがとうございました
! 皆様のお陰で、無事に、、、

! 悪魔の魂を封印できました。これは動かぬ証拠になるでしょう

! 本当にありがとうございますわ


※リック登場

(サリシア)
! おや、リック様ではありませんか

(リック)
! サリシア、僕が悪かった
! まさか、また悪魔にそそのかされていたとは、、、

(サリシア)
! リック様、やけに情報が早いですわね

(リック)
! 実は、気になって冒険者に扮して一連の動きをみていたんだ

(サリシア)
! あら、そうでしたのね

(リック)
! サリシアは本当にすごいね。それに、僕なんて君の足元にも及ばないよ
! ここは潔く爵位を返上して平民として生きていこうと思う
! 冒険者のみんなにも迷惑をかけた。こころからお詫びする

(サリシア)
! リック様、自覚をお持ちになったのは素晴らしいことですわ。見直しました
! 爵位返上の件はサマンサ様に話した上で、王室に相談するとよろしいかと

(リック)
! そうさせてもらうよ愛しのサリシア

(サリシア)
! まあ。リック様ったら・・・
! 今後のことは、全て解決してから、話し合うとしましょう
! お疲れになっている冒険者の皆様を引き止めるのは失礼ですわ

(リック)
! 確かにそうだな

(サリシア)
! 皆様、本日はありがとうございました
! また、お会いしましょう

(リック)
! ごきげんよう

END

【飛鳥・出雲・桜・倭国・瑞穂・北斗・大和・無限シャード】6月のイベント予定 

平素はEMプログラムへのご理解とご協力ありがとうございます。
6月のイベント予定をお知らせします。

6月6日(土)
・22:00~ 無限シャード / ミニイベントLUDO2026(無限代表決定戦)

6月7日(日)
・22:00~ 桜シャード / ミニイベント

6月9日(火)  
・22:00~ 大和シャード / イベント(5月分)

6月11日(木) 
・22:00~ 北斗シャード / イベント(5月分)

6月14日(日)
・22:00~ 北斗シャード / ミニイベントLUDO2026(北斗の参加者募集)

6月17日(水)
・22:00~ 瑞穂シャード / ミニイベントLUDO2026(瑞穂代表決定戦)

6月20日(土)
・21:00~ 飛鳥・無限シャード / イベント (未定)

6月21日(日)
・21:00~ 出雲・桜シャード / イベント (未定)

6月24日(水)
・21:30~ 瑞穂・倭国シャード / イベント (未定)

6月25日 (木)
・22:00~ 大和シャード / イベント (未定) (仮日程)

6月28日(日)
・21:00~ 北斗シャード / イベント (未定) (仮日程)
・22:00~ 桜シャード評議会
・22:00~ 瑞穂シャード評議会