Event Fiction 大和撫子の失踪 – Part 3.

タケルは朦朧とする意識と傷ついた体をひきずりながら、ナデシコとその母親と過ごした あの海辺の家を探してさまよっていた。夕闇とともに激しさを増してきた吹雪が、 タケルの着衣のない上半身を、さらに切り刻むかのようであった。

けれどタケルの腕は、あの恐ろしい赤いもののけの死体を切り裂いた、一人の勇者が差し出した 淡い桃色の着物をしっかりと抱えているのだった。 そこにひと針ひと針刺された千人針は、まるで無垢な娘の瞳のようにきらきらと輝いているのだった。

タケルにはひとつの確信があった。この撫子の花をかたどった千人針は、ナデシコが 刺したものに違いない。 けれどなぜか、この千人針は、途中で糸がぷっつりと切れてしまっているのである。

ナデシコは完成を目の前にして、恐ろしいおろちの魔力の前に、力尽きてしまったのだろうか?

あの恐ろしい魔女が本当にナデシコなのだろうか?

ナデシコの母はどこへ行ってしまったのか?

魔女に憑依されてしまったのだろうか?

タケルはナデシコとその母を救いたいと願いながらも、恐ろしげな魔女の姿を思い出しては 逡巡するのであった。

すると、今しがたまであれほど吹き荒れていた吹雪がぴたりとやみ、漆黒の闇をふたつに 分かつように、天からひと筋のまばゆい光が差して来たのであった。

「案ずるでない。タケルよ。」

タケルが目をしばたたかせながら、その光の中をみつめると、そこには紛れもなく勇島の皇妃、 咲耶姫の姿があるのだった。

ナデシコとその母は不落の要塞でそれぞれに囚われの身となっている。 お前はその刺しかけの千人針が、もののけの魔力を封じ込めている間に、 二人を助け出さねばならぬ。」

タケルはただ驚き、言葉を失っていた。咲耶姫は続けた。

「さあ、タケルよ。急ぎなさい。千人針の切れた糸はお前がつながねばならぬ。 伝説の針箱はあとひとつ足りなかったのだ。けれどナデシコとその母はもののけの目を盗み、 かろうじて要塞の外に出ることができた。そこからはそなたの助けが必要なのだ。」

その言葉を聞くなり、ようやく事態を飲み込んだタケルの頬に赤みが差し、胸は喜びに打ち震えた。 ナデシコは生きている!その母とともに。

「タケルよ。よく聞きなさい。お前は要塞の東西で待つナデシコとその母を、それぞれ下界へ伸びる 別々の道から脱出させなくてはならぬ。道は平たんではない。幾多の結界を破って進まなければならぬ。 途中で命を落すやもしれぬ。よいな?」

タケルは咲耶姫の目をまっすぐにみつめ、ある決意を胸にゆっくりとうなずいた。

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日時:11月27日(土)夜8時30分スタート ※通常より30分前倒しされます。ご注意ください。 場所:誠島(六分儀座標59o 46N’ 54o 21′W)禅都北の砂漠の小さな家周辺 ※前回と同じ 注意事項: ・当日は戦闘準備のうえお越しください。 ・貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いいたします。 ・当日はラグ軽減のため、複数個所(2か所)での戦闘を予定しています。 ・ゲートはイベント開始後もしばらく解放していますので、途中参加も可能です。 ・場所の移動は物理的に可能ですが、自己責任において行ってください。  プレーヤーの皆さまのご協力をお願いいたします。 ・イベント開始時にはナデシコ?の周りを空けておいてね!