第3回 ロイヤル・ブリタニアン銀蛇自警団 出動指令 - それぞれの決戦

● 狂える男

「私の名の由来かい?」

男は手元の作業から目を離すことなく答えた。
どこからか吹き込んでくるかすかな風に、短くなったロウソクの炎がゆらりと揺れる。薄汚れた黄色い壁に映った男のメイジ帽の黒い影が、大きく伸びたり縮んだりする様を眺めながら、銀蛇自警団の団員は頷いた。

セト(Set)あるいはステカー(Sutekh)とも呼ばれたエジプト神話の神だ。実の兄のオシリスを殺めて遺体をバラバラにし、ナイル川に投げ込んだと言われる。」

男の表情は見えなかったが、銀蛇自警団の団員はわずかに身を固くして身構えた。男は続けた。

オシリスの妻イシスは遺体を集めてミイラとして復活させた。その息子ホルスとセトの戦いは実に80年間に及んだと言われる。」

突然、男は落ち着かない様子で部屋の中を足早に歩き始めた。

「粗野な愚か者ばかりだ!」

遠くで雷鳴のとどろく音がした。

小さなネズミは上着の内ポケットの中でますます身を縮こませ、不安げに上着の主を見上げた。上着の主である銀蛇自警団の団員は手元のメモにペンを走らせながら、できるだけ平静を装ってたずねた。

「あなたには、お兄さんがいらっしゃったのですか?」

再び雷鳴がとどろき、ロウソクの火が消えた。暗闇の中で男の声がした。

「はて、何をするんだったかな?」

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● 挑む女

「君は自分が何を言っているのかわかっているのかね!?」

シリアはノックもなく部屋に入って来るなり頬を紅潮させて声を荒げるジョフリーに、立ち上がるタイミングを完全に失ったまま、半ばあきらめたように腰を半分浮かしながら答えた。

「先般申し上げた通りです。サー。銀蛇自警団には指揮官が必要なのです。」

ジョフリーは素早く辺りを確認すると、シリアの鼻先に息もかからんほどに顔を近づけ、怒りに震えながら一語一句を絞り出すようにして言った。

「いいかね、君は上長であるこの私の顔に泥を塗っただけではない。ご遺族ならびに国王陛下の許可なく墓を掘り返すなど、国家反逆罪にも等しい。この責任は……。」

「恐れながら、サー。セオドアは生きております。」

なおも口を開こうとするジョフリーを遮り、シリアはようやく椅子から立ち上がった。

「エリザベスは20年前、セオドアを亡くなったことにする必要があった。しかし、フェローシップがなりを潜め、セオドアの命を狙っていたと思しきデスネル亡き後も、なぜ彼をそのまま死んだことにしておいたと思いますか?」

シリアは大きく息を吸い込むと続けた。

「私はセオドアが、ゼリバン家の不名誉となる所業をしていたと、そう確信しております。」

そう、CCが泣いたのは彼が亡くなったからではなかったのだ。泥と涙に汚れたCCの端正な横顔を思い出して、シリアは冷たいプレートチュニックの奥で、何かが疼くのを感じた。

「サー・ジョフリー!」

シリアはジョフリーに向き直り、何か甘やかなものを振り払うかのように敬礼した。

「どうぞ、このシリアに最後の任をお与えくださいますよう! 必ずやあの男を連れ戻してごらんに入れましょう。」

言葉を飲み込んだジョフリーに、シリアは続けた。

「銀蛇自警団には、指揮官が必要なのです。」

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● 滅びゆく街

「お願いします……! 我が街をよしなにお取り計らいくださいますよう!」

立派な身なりのエルフの女は白い顔をますます蒼白にし、黒いシュラウド姿の男にすがりつかんばかりにして訴えた。

「ギルドとの契約には週に200万の寄付が必要です。市民の戦闘能力を高めるためには絶対に必要な経費です……。私はこの街を再びあのような廃墟にしたくはない……! 街の防衛能力を高めるためにはもっと、もっとお金が必要なのです!」

シュラウドから覗く男の口角がわずかに上がったように見えた。

「首長殿のご厚意により、隠密裏に配置されたブローカーたちは、今日までに相当数のブラックロックを集めることができた。感謝申し上げる。だが、そろそろ我々の集積施設も手狭なようでね。」

女は大きな目を見開きながら、シュラウド姿の男から一瞬たりとも目を離すことなく、素早く相槌を打った。

「さすればここに……。ブラックロックの一大集積地を誘致してはどうかね? そうすれば“あの方”も首長殿への援助を惜しまないであろう。この島は堅牢な城壁に守られ、サーペンツにも匹敵する城郭都市となる。市民のための戦闘訓練所の開設も思いのままであろう。」

女はシュラウド姿の男の手を素早く取ると、その足元に跪き、感激に声を震わせながら叫んだ。

「我が同胞、アリエル・ヘイブン、万歳!」

物陰から一部始終を見ていた一人の男が、ズボンのポケットからありあわせの紙を取り出そうとわずかに足を動かしたその時、小石が勢いよく斜面を転がり落ち、砂岩でできた橋の欄干に当たって乾いた音を立てた。銀蛇自警団の団員は小さく舌打ちすると、素早く暗号らしきメモをしたため、リコール音を残して去った。

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日時:7月18日(木)夜10時より開始 場所:サーペンツ・ホールドのカウンセラーギルド (六分儀座標: 153o 11′S, 115o 44′E) ※二ジェルムEMホールよりゲート設置予定

◆ 平日の定期イベント(毎月第3木曜日)の第3回となります。
◆ ミッションを受け、自らの足で調査、情報収集を行い、レポートにまとめて提出します。
◆ イベントチャンネルVSS(#なし) にお入りください。
◆ 戦闘準備の上、お越しください。
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 本イベントは階級を定め、貢献度に応じて定期的に団員の表彰を行うポイント制のイベントです。
  詳しくはこちらをご覧ください。
  ポイント加算や表彰制度については今後変更になる場合があります。
◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、
  イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。
  - イベント進行の妨害、かく乱行為。
  - EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。
◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!