第2回 ロイヤル・ブリタニアン銀蛇自警団 出動指令

「武勇の盾がどうかしたのかね?」

いつものように大きなマホガニー製のライティングデスクをはさんでサー・ジョフリーと向かい合いながら、ブラックソーン王が落ち着いた声で尋ねた。

「はっ……。ダスタードで武勇の盾を見たと証言する団員が後を絶たないのです。恐れながら陛下、私が現場に行った時には盾は跡形もなく消えておりまして……。もともと武勇の盾はかの王が誘拐され、陛下が摂政となられた際にお傍にあったと聞き及んでおります。今現在の行方を陛下がご存知であればいくばくかの謎が明らかになるのではないかと思いまして。」

大きく開け放たれたバルコニーからレースのカーテンを撫でながら入り込んでくる風に初夏の匂いを感じながら、サー・ジョフリーはプレイトメイルチュニックを脱いでしまいたい衝動にかられた。

ブラックソーン王はサー・ジョフリーの額に浮かぶ汗を愉快そうに眺めながら答えた。

「今現在の所在については不明だが、徳のシンボルのひとつとして一時はサー・カビラスの手元にあったことは間違いない。もっとも、君の報告にある“クラックス・アンセータの騎士”に加わる試練としてダスタードから取って来させたという盾の名は比喩であって、武勇の盾そのものではなかった可能性もある。」

確かにそうだ。八徳のひとつ、武勇のシンボルとしてサー・カビラスが文字通り人生をかけて集めたものだ。ダスタードに転がされていた埃まみれの盾と同じものであろうはずがない。ではあの盾は偽物だったのだろうか。なぜ、消えてしまったのだろうか。

サー・ジョフリーはブラックソーン王の言葉に神妙に耳を傾けながらも、バルコニーの白い窓枠ごしに切り取られた四角い空を視界の端にとらえていた。その昔シリア(Syria)という女戦士にピットでのスパーリングで無様にも喉元にスピアをつきつけられ、見上げた青い空には今日と同じ白く細い雲がたなびいていた。女戦士のコイフからはみ出た一筋の金髪が風にそよいでいたが、彼女の顔は逆光で黒く塗りつぶされていてよく思い出せない。

今回の活動には謎が多すぎた。依然としてサー・ファントムの行方もわからない。

消えた盾、消えた戦士。

「スラッシャー・オブ・ベイルズの影、ダークメッセンジャーの影、戦士の影……。」

サー・ジョフリーは誰へともなくつぶやいた。ブラックソーン王もまるで聞こえなかったかのように話を続けた。

アンダーワールドのアリエル・ヘイブンが何らかの輸送機能を持っているという仮説は大変興味深い。私はむしろ実際にはそこにないはずのものが、“複製”されて現れたかのような印象を持っている。」

無意識に思い描いていた女戦士の顔の輪郭が、ブラックソーン王の顔にぴたりと重なった。そこにいるはずのない金髪の女戦士がサー・ジョフリーを見つめながら口を開いた。

「タイボール(Tyball)、いや、かつて彼を翻弄した悪魔の野望はいまだに潰えていないのかも知れない……。スラッシャー・オブ・ベイルズが実体を伴ってブリタニアの地に現れることは何としても阻止しなくてはならない。そもそも一体誰がタイボールをアンダーワールドに影として蘇らせたのか。また、彼が影に過ぎないとしたら、その実体はどこにあるのか。」

あの戦士も実体を伴わない幻だったのだろうか?次の瞬間、サー・ジョフリーは自分でも思いがけない言葉を口走っていた。

「陛下、ジェロームの戦士訓練学校“ライブラリ・オブ・スカーズ(Library of Scars)”のシリアに話を聞いてみようと思います。」

ブラックソーン王はサー・ジョフリーを見つめながら、先を促した。

「消えた戦士の素性について何かを知っているかも知れません。彼女はデスネル亡き後校長に就任しているはずです。」

サー・ジョフリーが一気に話し終えて敬礼すると、バルコニーのレースのカーテンが風をはらんで大きくふくらんだ。カーテンの向こう側でブラックソーン王が、もう行ってよい、とサー・ジョフリーに仕草で伝えたように見えた。

サー・ジョフリーはブラックソーン王の書斎の外で、堰を切ったように背中に流れ落ちる汗を感じていた。決して慣れることのない畏怖の念は、かの王には決して感じたことのないものだった。早く、シリアに手紙を書いてしまおう。そうだ。彼女にならしばらく銀蛇自警団の指揮官を任せても良いかも知れない。

サー・ジョフリーは自分のアイディアに満足したと見えてようやく微笑んだ。

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日時:6月20日(木)夜10時より開始
場所:サーペンツ・ホールドのカウンセラーギルド (六分儀座標: 153o 11′S, 115o 44′E)
※二ジェルムEMホールよりゲート設置予定

◆ 平日の定期イベント(毎月第3木曜日)のリバイバル第2回となります。
◆ ミッションを受け、自らの足で調査、情報収集を行い、レポートにまとめて提出します。
◆ イベントチャンネルVSS(#なし) にお入りください。
◆ 戦闘準備の上、お越しください。
◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。
◆ 本イベントは階級を定め、貢献度に応じて定期的に団員の表彰を行うポイント制のイベントです。
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