雪化粧を済ませたブリタニアがめずらしく頬をゆるませたかのような暖かな午後、デンス卿は召使のサンチョとともに冒険の道すがら、素朴な作りのネックレスを拾いました。留め具の部分には“ルビー(Ruby)へ”と刻まれています。
「サンチョよ、これは美しいご婦人のものに違いないぞ。躾の行き届いたやんごとなきご婦人が、このように大事なものを落とすわけがない。きっと難儀な目に合われたのだろう。」
サンチョはやれやれまたかといった表情を浮かべながら、それでもこの困った主人に愛想よく答えます。
「よくまぁ、泥だらけの首飾り一つから勝手に話を作れるもんですねぇ。」
デンス卿もまた、まったく気にする様子もなく答えます。
「お前は本を読まないから想像力が足りんのだ。足元をよく見てみるがよい。小さなご婦人の足跡と狼の足跡が入り混じってるではないか。」
サンチョはおかしくなって、くすくす笑い出しそうになるのをこらえて辛抱強く応酬します。
「子どもが犬の散歩をしたって、同じような足跡になりますがねぇ。」
おやおや、そうこうするうちに二人はある街に到着したようです。宿屋へ馬をすすめようとすると、通りで一人の女性が何やら助けを求めています。そしてなぜか、そこには大勢の冒険者たちも二人を待ちかまえているのでした。
(暗転)
ちょうどその頃、デンス卿のいるブリタニアから百年ほど時空を超えたマラスでは、星の海のほとりで一人の老婆が膝に置かれた分厚い本をそっと閉じ、ため息まじりにつぶやきました。
「シャーリー、これは少々困ったことになったね?」
老婆のローブの裾を弄ぶことに余念がなかった黒猫は、一度だけ短くmeawと鳴きました。
日時: 12月7日(土)夜9時より開始 集合場所: 大和EMリワードホール ※ ニジェルムEMホールの外のカエル(テレポーター)をダブルクリック 当イベントは4月に行われたイベント「もうひとつのデンス卿の冒険日誌」の続編となります。 原作者はRoland Rampantさんです。