第10回 銀蛇自警団出動指令 - 次元旅行

魔法使いドリウス・ドースト(Dryus Doost)はムーンゲートに現れた奇妙な裂け目を見てうなった。

「うーむ。これは……。」

かってロストランドを舞台に繰り広げられたオフィディアン族との戦いで、テラサンキープの奥深くに設置されていた謎めいた祭壇が破壊され、ソーサリア中に黒い破片が飛び散った。時を同じくしてソーサリア中に奇妙な裂け目“rift”が現れたことは記憶に新しいが、ムーンゲートの裂け目はこの“rift”によく似ているようにドーストには思えた。“rift”がどのような条件下現れるのか、また、“rift”の先には何があるのか。ドーストの専門分野は次元から別の次元への移動、すなわち「次元旅行」であったが、その媒体であるムーンゲートに“rift”が現れた事実は研究者としての彼を久しぶりに高揚させた。聞けばこのあたりでは行方不明者も出ていると言うではないか! 以前現れたすべての“rift”は“The Void”と呼ばれるエセリアル虚空間にあるという古(いにしえ)の“rift”へとつながっていたが、つまりこれは、ブリタニアにおける魔法の力がエセリアル虚空間から流れ出るエーテルを変換しようとしたとき、外部から何らかの力が加わり、その経路に歪み、すなわち“rift”を形成したのではないかと彼は考えていた。あの時ソーサリア中に飛び散った黒い破片こそブラックロックであり、エーテルの流れに干渉し得るだけの強大なパワーを持つ物質はブラックロックを置いて他にない。

「つまり、その、ブラックロックは魔法を歪める触媒であると師はお考えなので?」

ムーンゲートの“rift”に固定された視線をそのままに、弟子が差し出した土壌の採取器具を受け取りながら、同意とも否定とも取れない曖昧なほほ笑みを浮かべながらドーストは答えた。

「そうとも言えるが、そうでないとも言える。ブラックロックが干渉するのはむしろ魔法の伝播の触媒であるエーテルであって、魔法そのものではない。」

彼の背後にはくだんの弟子の他にもう4、5人の弟子が控えており、ドーストの発する一語一句を聞き漏らすまいと熱心にメモを取っていたのであるが、ドーストその人は彼の弟子が何人いてそれが誰であるかということにはほとんど無関心であるように見えた。

「次の木曜日までにできるだけ多くの研究生を集めておきなさい。調査に向かわせる前に必要な情報を与えておこう。」

土の採取に夢中なあまり、背を向けたままのドーストがそう言い終わるか終わらないかのうちに、とりわけ熱心にメモを取っていた弟子の一人が紅潮した顔を上げるなり興奮気味に答えた。

「わかりました。先生!できるだけ多くの者を連れて参ります!」

他の弟子たちの怪訝そうな視線をものともせず、銀蛇自警団の団員はメモをしたためた羊皮紙を手早く胸ポケットに押し込んだ。羊皮紙のメモがわずかに押し返されたように見え、胸ポケットの奥から一匹のねずみが顔を出した。

「なんとかサーの足取りをつかめればいいのだけれど……。」

銀蛇自警団の団員はにっこりほほ笑んで答えた。

「大丈夫さ、シェリー。デュプレ卿が紹介してくれたんだし、君も知ってるえらい先生なんだろう?調査団に参加すればきっと色々なことが明らかになる。」

そうね、そうよね。小さなねずみは何度も小さく頷きながら、胸ポケットの中でいつしか深い眠りに落ちて行った。


日時:7月19日(木)夜10時より開始 場所:今回はイルシェナーの名誉ゲートよりスタートとなります。 ※二ジェルムEMホールよりゲート設置予定

◆ 平日の定期イベント(毎月第3木曜日)の第10回となります。 ◆ ミッションを受け、自らの足で調査、情報収集を行い、レポートにまとめて提出します。 ◆ イベントチャンネルVSS(#なし) にお入りください。 ◆ 戦闘準備の上、お越しください。 ◆ 予期せぬ出来事が発生するかも知れません!貴重品はなるべく持ち込まないよう、お願いします。 ◆ 本イベントは階級を定め、貢献度に応じて定期的に団員の表彰を行うポイント制のイベントです。 ◆ Stygian Abyssへのアップグレードがお済みでない方は、ミッションの一部を完了することができません。 ◆ 以下に該当の場合、あるいはEMが問題ありと判断した場合はコールのうえ、   イベント中止の措置を取らせていただく場合があります。   - イベント進行の妨害、かく乱行為。   - EM、あるいはほかのプレーヤーに対する侮辱的発言、またはそれに準ずる行為。 ◆ 皆さんのイベントです。マナーを守って楽しく参加しましょう!