第5回 ロイヤル・ブリタニアン銀蛇自警団 活動報告

ロイヤル・ブリタニアン銀蛇自警団 団員諸君!

突如舞い込んで来たトクノの謎の調味料、“味王”の情報は、ブリタニアに住む我々をも震撼させた。
まずはこの得体の知れないミッションに参加してくれた諸君に心より御礼申し上げたい。
事態は製造販売の元締めの討伐をもって収束したかのように見えたが、諸君もご承知の通り、我々はこの謎多き調味料、“味王”の成分や製造方法一切について調査ができたわけでもなく、流通経路を完全に絶ったわけでもない。
- なんだか、この間のブラックロック工場襲撃の時を思い出してしまいやすね。解決したような気分になりやすのに、思い返すと大事な事は何一つ手に残っていない。そんな、そんな気がするんでやんすよ。団長。(Molook団員)

実際にそうなのだから、気のせいではない。極めて中途半端な対応に終始した点については、15周年のお祭り気分と腹痛に負けた自分への戒めとしたい。実に、うん、鼻に来るミッションであった。
- つーん(AnAn団員)
- ワサビが効きすぎて涙が止まりませんでした。(Gouy団員)
- いろいろと考えさせられる「天高く馬肥ゆる秋」なのでありました。(匿名希望団員)
- 味王なんかより、古くからオーク族の間で使われている“アレ”の方が断然効き目があるわよ・・・? grins(Lio Leia団員)

“アレ”とは何であろうか。心身ともに弱っている時には何やらたまらなく魅力的な響きだが、ひとまず置いておいて活動報告に移るとしよう。

今回回収レポート: 39冊

あまり良い回収率とは言えないが、内容的には諸君の考察もいつにも増してバリエーションに富み、私としては満足している。提出をためらってしまった団員は、かえって難しく考えてしまったのだろうか?レポートの評価は決して一面的ではないのでまずは思ったこと、感じたことを三行でノートにぶつけてみて欲しい。どのような意見であれ、私が必ず目を通し、受け止めることをお約束しよう。

まずは一日の流れを振り返るにあたり、事実のみを淡々と追ったHayabusa団員のレポートが正確なばかりでなく、あまりにすんなりと読みやすく秀逸だったのでここに紹介しておこう。

Hayabusa

シェリーのドリル
当日私はすでにトクノに赴いていたため不在となったが、シェリーのドリルはおおむね好評であったようだ。
- しぇりーが可愛すぎて食べちゃおうかと思った。(GUNDAM団員)
- これぞ銀蛇自警団とさえ思います。(S団員)
- 全然動きがあっていないのに、「いいわよ!」と声掛けするシェリーに優しさを感じました。(Skills団員)
- 今回参加予定であったサー・ファントムが教練会場に来なかったためサーの指揮技能がどれ程のものであるかを拝見する機会を逸したのは残念であります。(Namida団員)
- シェリー!ドリルとても面白かったよ~!(匿名希望団員)

皆の一体感が醸成され、いい汗が流せたようで何よりだ。今後も定期的に実施したいと思う。当日のコマンド、および更に詳しい一日の動きについては次にご紹介する緻密かつ、詳細なHiroaki団員のレポートを参照されたし。

Hiroaki

◆ 味王とは何か
さていよいよ謎の調味料“味王”の検証作業に入ろう。
- 「味王」(みおう)とはインスタントラーメン等を生産している、台湾の食品工業の会社らしいです。他にヒットしたのは「味王」(ウエイユー)とは商品名で、調味料のようです。鶏骨や豚骨のダシみたいです。(匿名希望団員)

なるほど。貴重な情報だが、我々が検証作業に入ろうとしている“味王”とは異なるもののようだ。我々が今回あいまみえたトクノの調味料、“味王”は、ふりかければどんな料理でも一瞬にして一流シェフの味にしてしまう、ウルトラスーパーミラクルな調味料であった。しかし、よくよく考えてみるとブリタニア国民の食事に対する意識は非常に低いと言わざるを得ない。
- 食料のほとんどはペットのご機嫌取りに使用されています。また、好んで作成されるパイに関しましても専ら人に投げつけることに使用されているというなげかわしい状況です。(Eleria団員)
- おいしいは幸せでやんすけど。それだけじゃあっし、生きてくには足りないと思うのでやんすよ。(Molook団員)

その通りだ。食事には味だけでなく、様々な要素がある。食欲をそそるいろどりや盛り付け、何より愛する人との食事はコミュニケーションの一環でもある。だいたい、むやみに何にでも調味料をふりかけるのは作ってくれた人に失礼だとは思わないか?今回の事件はこういった気遣いの欠如や食生活に対する無関心が産んだ悲劇かも知れないのだ。そうでなければやはり中毒性など何らかの原因を疑うべきかも知れない。この調味料が持つ、素材本来の味すらかき消してしまう劇的な効果をある団員は、
- これは!! 先日仕事の展示会において、沢山の展示品を目の当たりにした僕だったが不思議な事にコンパニオンのおねーちゃんしか記憶にない症状とちょっとだけ似てるぢゃないか!!(nebiros団員)

と、表現した。確かに、本末転倒という意味では言い得て妙だと思う。大事なのは食事を介したコミュニケーション(製品)であり、調味料(コンパニオン)は脇役に徹するべきなのだ。
……少し話がそれたが、我々は調査をすすめるうち、もともとはこの調味料がハオチという大名の野菜嫌いをなおすために、味乃宮大五郎なる料理人によって開発されたという事実をつかんだ。
- 文化的にはともかく科学的にはそう進んでるとは思われておらなんだトクノの料理人がここまで強力な調味料を開発できておった事にまず驚愕ですな。トクノ侮るべからずじゃ(Jimmy団員)

それもそのはず、
- 徳之島には料理の味について所謂『旨味成分』についての造詣が深いと知人に教わった事がある。(nana団員)

では、“味王”の成分は純粋に“うまみ成分”だけなのだろうか?そもそも“うまみ成分”とは何であろうか。
- うま味(旨み、旨味、うまみ、うまあじ)は、主にアミノ酸であるグルタミン酸アスパラギン酸や、核酸構成物質のヌクレオチドであるイノシン酸グアニル酸、キサンチル酸など、その他の有機酸であるコハク酸やその塩類などによって生じる味の名前。5基本味の1つ。(出典: Wikipedia

なのだそうだ。これだけだと何がなんだかわからないが、グルタミン酸は昆布だしに含まれ、イノシン酸は鰹だしなどに含まれると言えばイメージしやすいであろう。既出のWikipediaによると、アミノ酸系のうま味成分と核酸系のうま味成分が食品中に混在すると、うま味が増すことが知られているそうだ。では、“味王”はかようにして、これらのうま味成分の絶妙な配合比によって生まれたミラクルな調味料だったのだろうか?
だとすればその配合比は金の卵か、はたまた悪魔のキスだったわけだが、当の大五郎はそのレシピを大名ハオチにさっさと無償で献上してしまったという。そして大名ハオチもその価値を知ってか知らずか実にずさんな管理をしていたようで、やがてそのレシピから発せられる金の匂いを大奥のハナコが嗅ぎ付けるに至ったというわけだ。
- ★“味王”普及のきっかけ
さて、完成した“味王”は他の調味料とは違い、Haochiが食べる膳にのみ最後に振りかけて使われるものだった。お毒見役も当然“味王”を使用するわけだが、ある時、“味王”を単独で舐めてみたところこれがなかなか美味だったらしく、他の料理にかけてみるという試みも行われた。そうした噂が広まって他の臣下もこっそり使うようになり、“味王”の増産が求められるようになった。やがて大名家内だけでなく問屋に卸す運びになって庶民にも知れ渡り、広く普及することとなったのである。(Misto団員)

なるほど。実におおらかだ。一方で、禅都に伝わるというある伝説を発掘してきた団員もいる。こちらもなかなか興味深い。

ZagZag

話を元に戻すが、多くの団員はこの調味料を単なるうま味成分の配合物とは考えていないようだ。次項の“味王の流通の目的”で詳しく見てみよう。

◆ 味王の流通の目的
- すでに味王は我らが世界の流通アマゾンで300g 672円で売られている もうこの世界も終わりだ(kottan団員)

世界を終わらせないために我々がいるのだ。落ち着きたまえ。ご指摘の通り、“味王”の過剰供給が意図的だと見られる根拠はその価格にある。
- そんな値段設定で製造元は採算が取れるのだろうか。シーマーケットではサミュエルのソースより売れていると言うが、そんな売れ筋商品ならもっと値段を上げても良さそうなものだ。(Misto団員)
- 利益は少ないことが見込まれるため、Hanakoや販売者は何者かからの給付金等、別の方法で利益を得ていたのではないだろうか。(Hiroaki団員)

一方であまりの安さにこれは粗悪な原材料を使った偽物と断じる団員もいた。
- 興味深いのは味王の成分である。格安で売られている偽物は、味覚を麻痺させ、美味いものに騙してしまうというところから、山椒(弱いしびれと味覚増進)そこらに生えているキノコ(毒で味覚異常)と予想する。正規品は偽物と似ているが、味覚に有効に作用するキノコなのだろう。(Leaf団員)

そこらに生えているキノコ、というくだりがさりげなく恐ろしい。この仮説が正しいとすると、まさか、美食におぼれた大奥のハナコが本物を独占するために粗悪な偽物を市場に流通させたということになるのだろうか……?
更に、私を身震いさせたのは、“味王”の流通目的はブラックロックに関連した人体実験だとする説である。
- 団長がBlackrock Stewを美味しく食べられたことから、Blackrockが食品中に混入してても気付かない。よって、Blackrockを長期的に摂取した際の人体への影響を、市民を使って調査しているのではないだろうか。(Hiroaki団員)

そういえば、何名かの団員から、私がブラックロックシチューを食べた後、その様子を件の首長が何者かに連絡していたとの報告を受けている。単なる狂言であることを祈るが、次にご紹介する団員の仮説は、大名ハオチの野菜嫌い克服など完全に表向きの理由であって、実は“味王”はいまだ見えざる大きな敵によって、ブラックロックに関連する目的のために開発されたのではないかとすら思わせる。
- 前回の何でも食べて吸収するワームの事を思い出したのだが、ブラックロックを食べさせて精製するという仮説を立てた際、岩のようなブラックロックを口にするかと疑問を持った。しかし、味王のような特別なふりかけをかけて問題を解決できるかもしれない。(Sam団員)

そうだとしたら恐ろしいことだ!到底、調味料として一般庶民の食卓に上るようなシロモノではない。どうやらあれから禅都の食品衛生局がようやく重い腰を上げてくれたようだが、もし本当に“味王”にブラックロックがらみの目的があるとしたら、敵はとてもじゃないが彼らの手に負える相手ではないだろう。調査の行方を我々も注意深く見守りたい。

◆ パイという戦い方
- ダイスケはあっというまに特製のワサビ100%餡のパイを焼いたくま。(Kenneth団員)
- わさびの産地の道の駅に行くと定番のわさび揚げが売っています。色は今回配られたパイの色にそっくりです、結構きつい蛍光色 着色料無でアオサとお茶とウコンで蛍光色になるそうです。(Liavelt団員)

ほほう……。生地にわさびが練りこまれているだけかと思っていたが、ワサビ餡だったとは……!ハナコも泣いて逃げ回るはずである。そして、わさび揚げとはまたうまそうだ。一度食べてみたいものである。
ところで今回、味王の成分や目的について多くのレポートが寄せられた中、パイというブリタニアに近年登場した戦い方にスポットを当てたレポートを寄せてくれた団員がいる。
- 例えばであるが、オーフラーの花を材料としたパイなどを作ることでブラックロックの力で生まれた生命体の力を削ぐことが出来るのではないだろうか。(Eiku団員)

なるほど、これは大変貴重な提案だ。次にトクノを訪れた際にはダイスケ殿に試作品の提供をぜひお願いせねばならないだろう。

◆ 料理は愛情
- 彼女の料理の腕前はどのようなものなのだろううか。この辺りを深く調査するのは、個人の名誉に関わる事であろうし、何より報告書は彼女も目にする機会があるだろうという事で触れない事にしておこうと思う。(nana団員)
- PS・・・この先。シリア氏から差し入れがあった場合断ることにしておこう。(Koumei団員)
- GM調理師の団員の差し入れとかで舌が肥えちゃって、一般人の家庭料理とかでは満足できなくなってませんか?しいちゃんに一言謝った方が良いと思います~。(匿名希望団員)

まず、彼女の名誉のために断っておくが、彼女の料理がまずいと言うよりも、完成度の高すぎる料理というのはおよそ家庭の味ではないのだ。つまり、この技術は家庭の調味料という形ではなく、別の使い方をすべきだと思うのだ。というわけで、大名ハオチの野菜嫌い克服などもそうだが、ダイエット食品や減塩食などの味付けに使用するのはどうであろう?うむ。決して話をそらそうとなどしていないぞ。決して……。
- 私にはどうすることもできないが、ただ秘匿の品とするのも惜しい品である。(Eiku団員)
- 問題は使い方であり、『味王』自体には何の問題があるか(匿名希望団員)
- どんな道具でも例えば包丁のように人に向ければ凶器となるが、正しく使えば美味しい料理を作ることが出来る。(Christina団員)

うむうむ。その通りだ。今後の応用次第でこれはトクノを代表するテクノロジーになるだろう。医師や薬剤師の処方のもと、使用するのが理想の形かも知れない。
ここで、シリアとモンバットの子どもとの交流を描いたalianrhod団員のレポートをご紹介しておこう。料理ができようが、できまいが、物語の中のシリアは十分優しく、魅力的ではないか。

alianrhod

◆ 番外編 - ハナコ聖女説 -
さて、意外なことだが、聖女とまでは言わないまでも何名かの団員があのハナコに同情の声を寄せていた。確かに自己責任とはいえ、あそこまで太ってしまったのは何やら満たされないものを食べ物で満たそうとしていたのかも知れないし、大奥という過酷な環境に身を置いていたのだからいろいろストレスもあったことは察するに余りある。
- そういう調味料に頼るのはまだ良いとしてもちゃんと臨床試験とかしない段階で他人に渡しちゃダメでしょ?もし仮に味王の治験対象としてハナコを利用したとすれば、結局ハナコもまた犠牲者だと私は考えるのだ。- 中略 - きっとハナコも味王騒動の責任を一身に負わされ捨て駒とされたんだろう…。(pelu団員)

真偽のほどはわからないが、ハナコを美食の地獄から救い出すという選択肢もあるにはあったのではないか。また、今現在流通している“味王”が、後に何らかの改良を加えられたものではないことが絶対条件ではあるが、そもそもが大名であるハオチの野菜嫌いを直すために開発されたものであるなら、そう危険なものではなかったはずなのである。ここでは匿名希望ながら、ハナコに同情的なレポートを一冊ご紹介しよう。

tokumei

◆ 総括
さて、そろそろ結びに入ろう。
今回レポートの提出とともに、私にかぼちゃを寄越した団員が何名かいるのだが、ルーンの同封を忘れている者がいる。これを読んだら詰所のポストに投函しておいてほしい。
あと、今回は最後に私が体調を崩したため、諸君に思いの外心配をかけてしまったようですまなかった。以下、いただいた差し入れの目録である。お心遣いに感謝する。
alianrhod団員からぺプタの消化液2本
Chocolate団員からハロウィンのお菓子とミルクとワイン各1と色々
Misto団員からパイと酒各1(シェリーにチーズ)
Molook団員から豆の塩ゆでとエールとワイン各1
nana団員からシチューとバナナとりんご各1

消化液は役に立ったようで、いただいた差し入れは腐らせずに全部いただくことができそうだ。

ではいよいよベストレポーターの発表に移ろう。今回もベストレポーターとは別に、ユニークと思われる何冊かのレポートを特別に展示させていただくことにする。ぜひ、EMリワードホールに足を運んでもらいたい。

ベストレポーター(アルファベット順)
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alianrhod団員
Chocolate団員
Christina団員
Eiku団員
Eleria団員
Hiroaki団員
Leaf団員
Misto団員
nana団員
nebiros団員
pelu団員
Sam団員
ZagZag団員
匿名希望団員

展示レポート(アルファベット順)
———————————–
ARBOL団員
Hayabusa団員
Jimmy団員
Kenneth団員
kottan団員
Koumei団員
Molook団員

ハロウィンの熱も冷めやらぬ中、八徳とヴェスパーの街には侵攻軍が攻め入っていると聞く。背後には謎多き人々が暗躍しているようであり、噂に聞くマラスのどこかに眠る遭難船との関連も気になるところだ。
どうか諸君には銀蛇自警団で培った洞察力を生かし、ブリタニアに今まさに起こっているあらゆる事象を注意深く観察し、分析してもらいたい。
いつか、きっとそれが諸君の身を助けるだろう。

それでは諸君、次回のミッションでまた会おう!